第1回、第2回と「お尻の筋肉は、下半身の要『股関節』を動かす点から重要。だから、尻トレでお尻の筋肉を鍛えよう」という内容で国際武道大学体育学部の荒川裕志准教授に聞いた。ただ、「股関節」まわりの筋肉に着目すると、「お尻の筋肉ではないが、大殿筋や中殿筋とは異なる方向に股関節を動かす腸腰筋(ちょうようきん)も鍛えてもらいたい」と荒川准教授は語る。そこで、腸腰筋を効率よく鍛える方法を聞いた。
腸腰筋は、主に大腰筋と腸骨筋の総称であり、太ももを前に振る働きがある。これまで解説してきた大殿筋は、太ももを後ろに振る働きがあるが、ちょうど逆の作用を持つというわけだ。
「ロコモ予防を見据えると、腸腰筋を鍛えることで、(1)歩行速度を維持できたり、(2)歩行時の転倒予防になると考えられます」と荒川准教授は言う。

まず、1つ目の歩行速度について聞いてみよう。
歩行動作は、左右の太ももを交互に前後へ振る動きとなるが、「ゆっくりめのスピードで歩く場合は、太ももを前に振るための筋力はほとんど必要がありません。振り子のように足全体を前へ振る作用で、積極的に太ももを前に振らなくても、足が“勝手に”前方に振られるのです。しかし、スピードを上げて歩く場合は、腸腰筋によって太ももを積極的に前へ振っていく力が必要になります」と荒川准教授。
そのため、腸腰筋の筋力が衰えると、早歩きの際に太ももを前に振る力を十分に補えず、結果的に歩行速度の低下につながると考えられるという。
次に、2つ目の「転倒予防」を見ていこう。
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