女性の間で話題の「尻トレ」。尻トレとは、お尻の筋肉トレーニングのこと。年とともに下がってくるお尻を引き上げ、“美尻”になると人気を集めている。それだけではない、尻トレは、ロコモ予防にも役立つという。『超・尻トレ』(日経BP)の著者、国際武道大学体育学部の荒川裕志准教授にその方法や効果について聞いた。
「年を重ねて、長く歩き続けるためにも尻トレが必要です」――筋トレに詳しく、トレーニング科学の研究者でもある荒川准教授は言う。
人生100年時代、筋トレの重要性を知っている人は多いだろう。しかし、なぜお尻を鍛えないといけないのか。
そのカギは股関節にあるという。「主にお尻の筋肉が中心となって動かす『股関節』は、ほかの関節に比べて、歩く、立ち上がるといった動作に大きく影響します」(荒川准教授)。
股関節は、骨盤の凹んだ部分に、大腿骨(太ももの骨)の丸い骨頭(こっとう)という部分が組み合わさってできている。球関節といわれる構造だ。そのため、自由度が大きく、さまざまな方向に太ももを動かせる。
一方、ロコモ(ロコモティブシンドローム)とは、運動器症候群のことで、骨や関節、筋肉など運動器の衰えが原因で、立つ、歩くといった移動機能が低下している状態をいう。「だから、ロコモ予防には、股関節をしっかり動かせるようにしておくことが重要だと考えています」と荒川准教授は話す。
なかでも、「太ももを後ろに振る『股関節伸展』動作が重要です」(荒川准教授)。股関節伸展動作は、地面を蹴るときに使われる動きだ。歩くときも、後ろ足で地面を蹴るが、この地面を蹴る動作、すなわち股関節伸展動作がなければ、前に推進する力が生まれにくい。
そこで、尻トレだ。実は、この太ももを後ろに振る「股関節動作」を担うのが、大殿筋。お尻を覆う、最も大きな筋肉だ。鍛えると、お尻をキュッと盛り上げてくれることで知られている。では、大殿筋を鍛えるにはどうすればいいか、荒川准教授に聞いてみよう。