脈が遅いだけの「洞徐脈」は怖くない
第4回 「スポーツ心臓」から「突然死の恐れ」まで、脈が遅くなる不整脈
梅方久仁子=ライター
「なんとなく怖い」というイメージを抱きがちな「不整脈」の正体を、分かりやすく解説する本特集。最後に取り上げるのは、脈が遅くなるタイプの不整脈(徐脈)だ。一口に「脈が遅い」といっても、まったく問題のないものもあれば、ペースメーカーの植え込みが必要になるような深刻な不整脈もある。「危険な徐脈」の見分け方を、不整脈の専門家である公益財団法人心臓血管研究所所長の山下武志さんに聞いていく。
健康診断で指摘される「脈の遅さ」の大部分は心配いらない
脈が遅く、1分間の脈拍数が50未満になる場合を徐脈という。脈が遅いと、全身に血液が行き渡らず、命に関わるのではないかと不安に思う人も多いだろう。だが、公益財団法人心臓血管研究所所長の山下武志さんはこう話す。
「健康診断で脈の遅さを指摘される人は、ほとんどが洞徐脈(どうじょみゃく)です。洞徐脈というのは、心電図の波形は正常で、心拍数だけが遅くなっている状態をいいます。心不全など、原因となる病気があるために洞徐脈になる人もいますが、そうした持病がない場合は、特に問題はありません」。
特に原因となる病気がない洞徐脈は、第1回でご紹介した「期外収縮」と同様に、「怖くない不整脈」なのだという。
何が起こっている? |
電気信号は正常に出ているが、心臓の拍動が遅く、1分間の脈拍数が50未満になっている |
症状 |
無症状のことが多い |
主な治療 |
原因となる病気(心不全や甲状腺機能低下症など)がない場合は、治療の必要なし |
「例えば、鍛え上げたアスリートでは、1分間の脈拍数が30~40しかないという人は珍しくありません。これは、スポーツ心臓とも呼ばれるもので、運動時に全身の筋肉に酸素を含んだ血液をたくさん送るために、自然と心臓が大きくなり、1回の収縮で送り出す血液の量が多くなっているのです。こうした人たちは、安静時の心拍数(脈拍数)は少なくなります」
洞徐脈が見られるのは、アスリートだけではない。「スポーツをしていなくても、体質的に脈が遅い人もいます。それから、痛みへの反応で脈が遅くなることがあります。健康診断で、採血の直後に心電図をとると、かなり洞徐脈が増えますが、これは正常な反応で、病気ではありません」(山下さん)。
