カテーテル治療で95%治る不整脈もある!
第2回 最も危険な不整脈は「心室細動」、「上室頻拍」は根治可能
梅方久仁子=ライター
不整脈の9割は、「期外収縮」と呼ばれる、放置しておいても問題ない不整脈であることを前回ご紹介した。しかし、残り1割の中には、症状が激しく日常生活に支障が出るものや、一刻も早く救命処置をとらなければ死に至るものもある。特集第2回となる今回は、引き続き、不整脈のエキスパートである公益財団法人心臓血管研究所所長の山下武志さんに、「怖い不整脈」の正体と対処法を聞いていく。
一口に「不整脈」と言っても、その正体は千差万別だ。「そもそも不整脈というのは病名ではなく、整っていない脈すべてを指す総称です。例えば、ペットを飼っているといっても、犬や猫だけでなく、ウサギやハムスターを飼う人もいますし、インコ、亀、カブトムシなどを選ぶ人もいます。種類はたくさんあり、飼い方もさまざまです。不整脈とは、このペットのようなものだと考えてください。どんな種類の不整脈であるかによって、症状も治療法もまったく異なるのです」。公益財団法人心臓血管研究所所長の山下武志さんはそう話す。
第1回の最後にご紹介したように、主な不整脈をタイプ別に整理すると、表1のようになる。赤色が「突然死に直結する危険な不整脈」、オレンジ色が「すぐには命の危険はないが、脳梗塞を起こす可能性が高い危険な不整脈」、紫色が「症状の強いものや、失神による事故が心配なケースもあるが、基本的には命には関わらない不整脈」、青色が「放っておいてもいい不整脈」だ。
種類 | 脈の状態 | 主な病名 (症状名) | 特徴 |
期外収縮 | 脈が乱れる・飛ぶ | 心室期外収縮 上室期外収縮 | 不整脈の9割を占める。放置してよい |
頻脈 | 脈が速くなる 脈拍100/分以上 | 上室頻拍 | 命には関わらない。カテーテル治療で完治する |
心房細動 | 心臓そのものより脳梗塞の予防が重要。根治を目指したカテーテル治療も増えている | ||
心室細動 | 突然死の原因に! | ||
徐脈 | 脈が遅くなる 脈拍50/分以下 | 洞徐脈 | 原因となる病気がない場合は放置してよい |
洞機能不全症候群 | 命には関わらないが、症状が強い場合や失神による事故が心配される場合はペースメーカーを入れる | ||
房室ブロック | 良性と悪性のものがあり、悪性の場合は突然死の危険がある |
このうち、「怖くない」不整脈の代表格である「期外収縮」については、前回解説した通り。今回は、脈が速くなって動悸や息苦しさを感じる「頻脈」を取り上げる。
「心室細動」は心臓のポンプが止まってしまう、最も危険な不整脈
何が起こっている? |
心室から異常な電気信号が連続して出て、心臓のポンプが機能しなくなる |
症状 |
突然の失神(意識消失)、数分で心停止に陥る |
主な治療 |
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表1で赤字で示した「心室細動(しんしつさいどう)」は、突然意識を消失し、けいれんなどが起こり、何も処置をしなければそのまま突然死に至る、最も危険な不整脈だ。若い人が突然倒れて心臓発作で亡くなるケースの多くは、この心室細動が原因とされる。「年間約2万人が、心室細動による突然死で亡くなっていると見られています」(山下さん)。
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