不整脈の9割は「放置しても問題ない」
第1回 この30年でがらりと変わった不整脈の常識
梅方久仁子=ライター
脈の速さやリズムに異常が生じる「不整脈」。よく耳にする症状の1つだが、突然死の原因として報道されることがあるせいか、漠然と「怖い病気」と思っている人も多いのではないだろうか。だが、実は不整脈の9割は、「怖くない、放置しても問題ない不整脈」。残る1割の「怖い不整脈」の治療も、近年かなり進歩している。本特集では、誰にでも起こり得る不整脈を「正しく怖がり、正しく付き合う」ためのポイントを、公益財団法人心臓血管研究所所長の山下武志さんに聞いていく。

不整脈の9割は「放置しても問題ない、怖くない不整脈」
脈が速くなったり、遅くなったり、リズムが乱れたりする、不整脈。心臓がドキンッとするような自覚症状がある人もいれば、健康診断の心電図で偶然見つかる人もいる。発症には加齢も関係しており、年を取れば取るほど誰にでも起こり得る身近な症状だ。
脈は、心臓が全身に血液を送り出していることを示すサインだ。その脈の速さやリズムに異常が生じると、「そのうち心臓が止まって死んでしまうのではないか」と恐怖を感じてしまうのも無理はない。だが、実は、不整脈の9割は「放置しても問題ない、怖くない不整脈」。さらに、医療技術の発達により、残りの1割の「怖い不整脈」も、一部は手術で治る病気になっており、「心臓そのものではなく脳の合併症を予防する」ことに主眼が置かれるようになっているものもある。
健康診断で自分や家族に不整脈が見つかっても、すぐに慌てる必要はない。まずは、一見とっつきにくく感じる不整脈とは何か、そして「怖い不整脈」「怖くない不整脈」の正体について、この分野の名医である公益財団法人心臓血管研究所所長の山下武志さんに詳しく聞いていこう。