老眼が良くなると話題の「ガボール・パッチ」とは?
第3回 老眼の進行をゆるやかにする食事や生活のポイント
梅方久仁子=ライター
日常生活に不便を強いる「老眼」も、自分に合った対策を講じれば快適に生活できるようになる。前回は遠近両用レンズを使った眼鏡やコンタクトレンズ、手術など、基本となる対策を紹介した。しかし、基本対策ではフォローしきれない小さな困りごとや疑問を解決したい人は多いだろう。今回は、「老眼が良くなるトレーニングはないの?」「進行を遅らせるためにできることは?」「暗いところで見えにくいのはどうにかならないの?」といったさまざまな疑問にお答えしていく。
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第3回
老眼が良くなると話題の「ガボール・パッチ」とは?
調査編
1日3分、目ではなく脳を鍛える「ガボール・パッチ」
「トレーニングで裸眼視力が良くなれば」と願う人は多い。最近、テレビなどで話題の視力トレーニングは、老眼に効くのだろうか。
「いわゆる『視力トレーニング』は巷にたくさんありますが、科学的に一定の効果が確かめられているものは、ガボール・パッチと呼ばれる、特殊な縞模様を使ったトレーニングだけです」。老眼についての著書もある眼科専門医の平松類さん(二本松眼科病院)は、そう話す。
第1回で説明したように、目に入った光は水晶体というレンズで屈折し、網膜というスクリーンに像を映す。その像が視神経を通して脳に送られ、脳が認識してはじめて「見える」ことになる。視力回復のトレーニングには、(1)水晶体の厚みを変える毛様体筋の緊張を緩めることで機能を回復させるもの、(2)ピント調節の指令を出す自律神経を整えるもの、(3)脳の情報処理力を高めて見え方を補うもの――などがある。
ガボール・パッチを使った視力トレーニングは、このうち(3)に該当する。ピントが多少ずれた画像が脳に送られてきたときに、脳の情報の処理力を高めることで、見え方を補正するというものだ。一種の「脳トレ」と考えるといいだろう。
かつては「副作用の危険がなく、視力を良くすることが科学的に証明された方法は存在しない」と考えていたという平松さん。ところが、国内外の文献を幅広く調べていくうちに、ガボール・パッチという縞模様を使ったトレーニングが視力回復に効果があるとして米国などで話題となり、スポーツ選手やパイロットも実践していることを知った。
ガボール・パッチは、1971年にノーベル物理学賞を受賞したデニス・ガボール博士が考案した、特殊な数学的処理(ガボール変換)を行うことで生まれる縞模様のこと(次ページ図1参照)。この縞模様は、見ることを司る脳の「視覚野」を刺激することが分かっている。
「米国で行われた研究では、ガボール・パッチを使ったトレーニングで近視の人の平均視力が0.4から0.6に、老眼の人の近見視力(手元を見る視力)の平均が0.3から0.6に改善したという報告もありました(*1)。私も患者さんに実践してもらったところ、およそ8割くらいの人に効果があり、視力が平均で0.2ほどアップしました」(平松さん)。