「誤った3つの習慣」を続ける限り中途覚醒はなくならない
第3回 歳をとると増える「中途覚醒」「早朝覚醒」 どう防ぐ?
伊藤和弘=ライター
最新の睡眠研究を基に“睡眠の新常識”を紹介していく本特集。前回は、主に働き盛り世代を対象にした「なかなか寝つけない悩み」への対処法を解説した。最終回となる今回は、高齢になると増えてくる「中途覚醒」などの解消法を、睡眠医学のエキスパートである秋田大学大学院教授の三島和夫さんに聞いていく。三島さんは「中途覚醒に悩む人には誤った睡眠習慣を持っている人が多く、これを解消するだけで、中途覚醒が軽減する人も多い」と話す。誤った習慣とは何だろうか。

ここ20年で睡眠の研究は大きく進み、多くの“誤解”が明らかになるとともに、新たな事実も次々と発見されている。そんな最新研究を基に“睡眠の新常識”を紹介していく本特集。前回は、主に働き盛り世代などを対象にした「なかなか寝つけない悩み」への対処法を解説した。
最終回となる今回は、高齢になると増えてくる「中途覚醒」などの解消法をお伝えしよう。読者のなかでも、睡眠の途中で目を覚ます「中途覚醒」で悩む人は少なくないだろう。若い頃のように朝まで眠り続けることができず、何度も目が覚めてしまうのはつらく、不快なのはもちろん、“いい睡眠”が取れていないのではないかと不安になる。
考えてみれば、若い頃はいったんベッドに入れば「途中で目を覚ます」なんてことはほとんどなかった。それが歳をとるにつれ、睡眠の途中で目が覚めやすくなったり、トイレに起きたりすることが増えていく。2559人を対象にした日本大学の調査によると、「週に3回以上、中途覚醒がある」40~50代は12.7%だったのに対して、60歳以上になると21.2%にまで増えていた(女性心身医学. 2014;19:103-9.)。

歳をとると「中途覚醒」が増えるのは仕方ないことではあるが…
なぜ歳をとると中途覚醒が増えるのだろう? 睡眠医学の第一人者である秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座教授の三島和夫さんは次のように説明する。
「歳をとると睡眠の質が変わってきます。これが第1の要因です。高齢になると深い睡眠が減るので、ちょっとしたことで目が覚めやすくなるのです。また、睡眠中は脳の視床という部分にフィルターがかかって外からの刺激が入りにくくなるのですが、歳をとるとこのフィルターが弱くなるという要因もあります」(三島さん)
なるほど、いくら健康な人でも、歳をとれば睡眠が浅くなって目が覚めやすくなるのだ。「70歳を過ぎると、布団に入ってから朝まで1回も目を覚まさない人なんて10%もいません」(三島さん)
睡眠の質が変化するのは、シワや白髪が増え、体力が落ちるのと一緒で、加齢現象の1つなのだから仕方がない。高齢者が夜中に目を覚ますようになるのは、ある意味、当たり前のことなのだ(*1)。
とはいえ、中途覚醒は愉快なことではない。「できれば朝までぐっすり眠りたい」「せめて目が覚める回数を減らしたい」と考えるのも自然なことだろう。何か打つ手はあるのだろうか。
三島さんは、「加齢とともに睡眠の質は変わりますし、第1回で紹介したように年齢とともに睡眠時間も短くなります。若かった『あの頃のように』を目指してはいけません」と前置きしつつ、その一方で「『誤った睡眠習慣』をしているために中途覚醒になっている人も多く、習慣を改めるだけで問題が軽減することも多い」と話す。
これはどういうことだろうか。“誤った”睡眠習慣とは――。三島さんに詳しく聞いていこう。
この記事の概要
