「坐骨神経痛」を手術なしで治す、お勧め体操6選!
第2回 坐骨神経痛の7~8割は保存療法で良くなる
伊藤和弘=ライター
「坐骨神経痛」は、お尻から太もも、足先にかけて広がる坐骨神経に沿って起こる痛みやしびれ。腰痛とともに起こることが多く、放置していると歩行障害や排尿障害を起こすこともあり、QOL(生活の質)をいちじるしく下げるやっかいな症状だ。第2回は坐骨神経痛を手術なしで治す「保存療法」について、日本赤十字社医療センター脊椎整形外科顧問の久野木順一氏に詳しく解説していただく(第1回の記事はこちら)。
お尻から太ももの裏側を通って足先に至る坐骨神経は、全長1メートル余りもある、長く、太い神経だ。お尻から足の先までの運動や感覚をつかさどり、排尿にも関係している。この神経に沿ってお尻や脚に起こる痛みやしびれ、感覚異常は、坐骨神経痛と呼ばれる。
坐骨神経痛の原因は、実はほとんどが腰椎(背骨の腰の部分)の異常だ。若年層では椎間板の中身(髄核)が飛び出す椎間板ヘルニア、中高年では腰椎の加齢変性によって脊柱管(脊髄が通る空間)が狭くなる脊柱管狭窄症が特に多いことを前回説明した。どちらの場合も、腰の神経が圧迫され、その情報が腰から坐骨神経に伝わり、お尻から下の痛みやしびれを引き起こす。大元である腰の部分の痛み(腰痛)が同時に起こる人も多い。
歩くと痛いので遠出ができない、体を動かすと痛みが出る、しびれや感覚の異常が不快、腰に負担がかかるので家事もままならない…。そうした悩みを抱える患者は少なくない。治療の開始が遅くなると神経のダメージも大きくなって回復に時間がかかるようになるし、がんなど深刻な病気が隠れている可能性もある。「腰と脚」に痛みやしびれを感じるときは早めに整形外科を受診し、適切な治療を受けてほしい。
そこで今回は、これらの病気に対して医療機関ではどのような治療が行われるのか、特に、手術をせずに症状を和らげる保存療法の実際を見てみよう。
坐骨神経痛の7~8割は手術なしで治る!
坐骨神経痛の原因となる椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症に対しては、まずは十分な保存療法が行われる。「これらの病気と診断された患者さんに、いきなり手術を行うことは少なくなっています。椎間板ヘルニアで8割、脊柱管狭窄症で7割の人は、手術をしなくても保存療法で症状が改善します」と日本赤十字社医療センター脊椎整形外科顧問の久野木順一氏は話す。
老化によって棘ができてしまった腰骨(腰椎)や、変性してしまった椎間板は、残念ながら元には戻らない。だが、飛び出した髄核は自然に体内に吸収されることも多い。また、薬によって痛みや炎症を抑えたり、骨を支える筋肉を保護・強化したり、血行を促進したりすることで、日常生活に支障がない程度にまで症状を和らげる(寛解させる)ことができる。これらは保存療法と呼ばれている(下図参照)。