お尻や脚が痛む「坐骨神経痛」の原因は「腰」にあった
第1回 原因は腰椎の老化と悪い姿勢、放置すると歩けなくなることも
伊藤和弘=ライター
お尻から太もも、ふくらはぎ、すね、足先にかけて起こる痛みやしびれ。これらは「坐骨神経痛」と呼ばれ、日常生活の障害となるだけでなく、やがて歩行障害や排尿障害につながることもあるやっかいな症状だ。背景にあるのは、「腰椎(背骨の腰の部分)の加齢変性」と「日常生活の姿勢や動作」。本特集では、腰痛や坐骨神経痛の名医として知られる日本赤十字社医療センター脊椎整形外科顧問の久野木順一氏に、つらい「坐骨神経痛」の原因や、自力で治し、再発を防ぐためのセルフケアを聞いていく。
「坐骨神経痛」が悪化すると健康寿命を脅かす
お尻から太ももの裏側、すねやふくらはぎ、足先にかけて、痛みやしびれを感じる。脚の感覚に違和感があり、力が入りにくい――。
このような、下肢に起こる痛みやしびれ、感覚異常、筋力の低下を経験したことはないだろうか。これらは坐骨神経痛と呼ばれ、お尻から足先まで伸びる「坐骨神経」という下肢の神経に沿って表れる症状だ。人によって「かかとのしびれだけ」、「お尻の痛みだけ」、という具合に症状の出方は異なるが、症状が進むと、脚が痛くて長時間立っていられない、歩くのがつらい、お尻が痛くて椅子に座れない、といった状態にまで悪化し、日常生活の大きな妨げになる。
「坐骨神経痛は正式な病名ではなく、症状を表す用語です。坐骨神経につながる腰の神経がさまざまな原因で圧迫されることで、その痛みが坐骨神経に伝わり、お尻や太もも、ふくらはぎなどの支配領域に痛みやしびれが表れます。坐骨神経痛を治すには、痛みの原因を突き止め、その原因に応じて、症状を和らげたり、再発を防ぐためのケアを行う必要があります」。日本赤十字社医療センター脊椎整形外科顧問の久野木順一氏はそう話す。
坐骨神経痛は、痛みそのものがつらいのはもちろんだが、痛みのために長時間歩けなくなり、外出がおっくうになることで、下半身の筋肉が弱って“寝たきり予備軍” になってしまうリスクもはらんでいる。また、頻尿や失禁などの排尿障害を起こすこともあるという。「特に高齢者の場合は、かなり早い段階から排尿障害が起こることが、当センターの研究で分かってきました」(久野木氏)。
こうした事態を回避するためには、軽症のうちから、適切な治療とセルフケアによって坐骨神経痛を治していくことが重要だ。「年のせいだから仕方がない」とあきらめていたり、「そのうち治るだろう」と軽く考えたりしていると、下半身の筋肉が萎縮、あるいは神経が変性してしまい、手術をしても元に戻らなくなってしまう。
本特集では、脊椎疾患(背骨に関連する病気)のエキスパートであり、腰痛や坐骨神経痛に詳しい久野木氏に、つらい坐骨神経痛の原因と治し方を聞いていく。