ボディブローのように体を蝕む「糖化」から身を守る3つの対策
第2回 糖化コントロールの3本柱、まず優先すべき「食後高血糖」対策
柳本操=ライター
老化の主因の1つで、血管や内臓、骨、関節などの機能低下、そして見た目の老化にも密接に関わる「糖化」。近年の研究で認知症との関連も指摘されている。糖化を防ぎ、“老けにくい”体を作るためには何を実践すればいいのだろうか。糖化の専門家、同志社大学の八木雅之さんは、糖化対策は大きく3つの柱があると話す。今回は、最大のポイント「食後高血糖」の対策を八木さんに聞いていく。

近年、老化の元凶の1つとして、注目されている「糖化」。糖化は、肌などの見た目の老化だけでなく、血管、骨、関節組織、さらには糖尿病の合併症、認知症にも関わることが近年の研究で明らかになっている(詳しくは第1回をご参照ください)。
糖化のプロフェッショナル・同志社大学 生命医科学部 糖化ストレス研究センター チェア・プロフェッサー教授の八木雅之さんは、「糖化ストレスは、ボディブローのようにじわじわ効いてきます。人は血管から老いる、といわれますが、血管の内皮にアテロームといわれる糖化物の蓄積が起これば動脈硬化につながります。末梢血管が老化すれば糖尿病の合併症につながります。さらには、認知症、骨折のリスクを高めるといったように、さまざまな病気の発症や進行につながります」と話す。
第1回で解説したように、糖化ストレスの引き金になるのは高血糖状態、特に注意すべきは“食後”高血糖(血糖値スパイク)だ。そして、アルコールや脂質のとり過ぎも糖化の進行を後押しする。つまり、おいしいものやお酒が大好きな中高年齢層の人たちは、糖化のリスクにさらされているといえる。
気づくと全身の組織が糖化でボロボロになって寿命が縮まっていた――などという事態を避けるためにも、早急に対策に着手したい。そこで今回からは、八木さんに、糖化をなんとかして食い止め、老化を遅らせるための対策を聞いていこう。
「糖化コントロールの3本柱」とは?
では、具体的にどうすればいいのだろうか。八木さんは、糖化対策には大きく3つの柱があると話す。
「糖化ストレス対策の基本は、普段の生活習慣、特に『食事で常に抗糖化を意識すること』です。その中でも、糖化にダイレクトに結びつく『食後高血糖』を防ぐことが肝心です。1日3回の食事ごと、場合によっては間食をとるごとに、食後高血糖が起こって糖化が進んでいる可能性があると自覚することが対策の第一歩になります」と八木さんは話す。
そこで今回は、糖化対策の最大のポイントともいえる「食後高血糖」対策を詳しく解説する。なお、2つ目の対策「糖化反応を抑える(AGEsの生成を抑える)」や、3つ目の対策「できてしまったAGEsを分解する」については第3回で紹介する。
第1回で、食後高血糖が起こっているときに、糖化反応が進むと解説したが、実際に、糖をとると、血糖値上昇とほぼ同時に、体内の糖化の指標となる糖化生成物(メチルグリオキサール:糖化反応の中間生成物の1つ)のアルデヒドが増えていることが最新研究から明らかになっている(下グラフ)。
当初、八木さんは、糖化反応によってできる糖化生成物(中間生成物)は、食後もう少し遅れて生成すると予想していたが、この研究データでは血糖値上昇とほぼ同時に糖化生成物が生成されていることが分かり驚いたと話す。
「食後に高血糖が起こる『血糖値スパイク』が起こっている、まさにその時すでにアルデヒドの生成が進んでおり、血管内皮細胞は傷んでいくということです」(八木さん)