ED治療薬で動脈硬化予防? 性機能回復だけでないメリット
第2回 薬の持続時間は? 価格は? ジェネリックは? 聞いてきました
伊藤和弘=フリーランスライター
人間の性行為は子孫を残すことだけが目的ではない。一般に年をとれば性欲は衰えてくるが、ED(勃起障害)の陰に深刻な病気が潜んでいることもあるというから要注意だ。東邦大学医学部泌尿器科教授で同大学医療センター大森病院リプロダクションセンター長も務める永尾光一さんに、バイアグラなどED治療薬のメカニズムや、男性ホルモンを高める生活習慣について聞いた。

前回、EDが単にベッドの上だけの問題ではないこと、背景には動脈硬化や男性ホルモンの低下があるかもしれないことを紹介した。ご存じの通り、動脈硬化は心筋梗塞や脳卒中のリスクを高め、また男性ホルモンの低下はさまざまな不調をもたらす。男性ホルモンが低いほど生存率が低く、寿命が縮いという調査もある(*1)。
逆に言えば、ED治療は単に「再びできるようになる」だけではない。動脈硬化を改善し、寿命を延ばすことにもつながると期待できる。実際、週に1錠ずつバイアグラを飲んでいると、半年後には唾液中の男性ホルモンの数値が高くなることも確認された(*2)。そこで今回は「EDの治し方」とそれに付随する健康上の効果について解説しよう。
「男を立てる」バイアグラの仕組みとは?
現在、EDの治療にはバイアグラ(一般名シルデナフィル)、レビトラ(同バルデナフィル)、シアリス(同タダラフィル)といったED治療薬が使われている。これらは基本的に同じメカニズムで、大まかには「血管を拡張させる」作用がある。そのため、動脈硬化も改善してくれる可能性があるわけだ。
誤解している人もいるかもしれないが、これらの薬を飲んでも「朝立ち」のように自動的に勃起するわけではない。あくまで性的に興奮したとき、スムーズに勃起するようになる。その仕組みを理解するには、まず勃起のメカニズムを知っておかなければならない。
男性が性的に興奮すると、それが脳の中枢から脊髄を通ってペニスの海綿体神経に伝えられる。するとペニスの神経や血管からNO(一酸化窒素)が出て、海綿体の中にサイクリックGMPという物質が増える。このサイクリックGMPに海綿体の筋肉をゆるめる作用があるので海綿体の血管が広がり、大量の血液がペニスに流れ込むことで勃起する。
ところが、海綿体の中にはPDE5という酵素もあり、これがサイクリックGMPを分解してしまう。若いころはサイクリックGMPがたくさんできるので問題ないが、年をとって血管機能が衰えるとサイクリックGMPの量が減り、PDE5の影響が表れやすくなる。その結果、海綿体の筋肉がゆるまず、うまく勃起しなくなってしまう。