EDは心筋梗塞の前触れ? 性機能低下に潜む怖い病気とは
第1回 朝立ちが減ってきたら、動脈硬化や男性ホルモンの低下に注意
伊藤和弘=フリーランスライター
なかなか口にできないが、何歳になっても気になるのが“下半身の悩み”だ。動物と違って、人間の性行為は子孫を残すことだけが目的ではない。まだリタイアには早すぎるのではないか? ミドル以上なら誰もが気になる悩みだ。一方、ED(勃起障害)や性欲低下の陰に深刻な病気が潜んでいることもあるという。東邦大学医学部泌尿器科教授で同大学医療センター大森病院リプロダクションセンター長も務める永尾光一さんに解説していただこう。

男性の性の悩みでも特に深刻なものと言えば、ED(Erectile Dysfunction=勃起障害)だろう。
欧米人に比べて日本人は淡白だと言われている。中高年になって勃起しなくなっても、「もう年だし、無理にしなくていいよ」と枯れた笑みを見せる男性も少なくない。
しかし、EDが単にベッドの上だけの問題ではないとしたら、どうだろう? 最近の研究から、EDの背景には動脈硬化や男性ホルモンの低下が隠れていることが分かってきたのだ。
日本人男性の40歳以上の3人に1人はED
2017年に発行された「ED診療ガイドライン第3版」(日本性機能学会/日本泌尿器科学会)によると、EDとは「満足な性行為を行うのに十分な勃起が得られないか、または維持できない状態が持続または再発すること」と定義されている。最初から立たないのはもちろん、途中でダメになる「中折れ」も含まれるわけだ。
当然ながら、EDは年をとるほど増えていく。欧米7カ国で50~80歳の男性1万2815名を調査したところ、50代の30.1%、60代の51.1%、70代の75.6%がEDだった(*1)。
とりわけ日本は多い。日本を含む4カ国で40~70歳の男性2417名を対象にEDの割合を調べると、ブラジル15.5%、イタリア17.2%、マレーシア22.4%に対し、日本は34.5%とブラジルやイタリアの2倍以上(*2)。40歳以上の日本人男性のうち、実に3人に1人はEDということが分かった。
日経Goodayが2017年に行った、男性の体の不調に関する読者アンケートでも、3割弱の人が「ED、朝立ちがない」と答えている。