悪玉コレステロールを下げるのは運動? それとも食事?
第3回 コレステロール対策は、悪玉が高いか、善玉が低いかで異なる
田中美香=医療ジャーナリスト
コレステロールにまつわる誤解の真相や、検査結果の読み方を解説してきた本特集。最終回となる今回は、血中コレステロールを適正に保つための実践的な対策を紹介する。悪玉のLDLコレステロールが高いか、善玉のHDLコレステロールが低いか、そのタイプによって対策は異なる。コレステロール対策の専門家である帝京大学名誉教授の寺本民生さんに、タイプ別の対策を教えてもらおう。
コレステロールや中性脂肪など、血液中の脂質バランスが崩れると、「動脈硬化」が進行して血管が傷み、「心筋梗塞」などにより突然死に至るリスクが高まる。
健診結果の脂質のデータが基準値を超えると「脂質異常症」と診断されるが(詳しくは第2回を参照)、中でも最も注意すべきなのが悪玉のLDLコレステロールだということは、本特集で繰り返し紹介してきた。LDLコレステロールの値が高くなりがちな中高年にとって、LDLコレステロールを下げることは大きな課題だ。そのためにコレステロールを多く含む食材を控えたり、運動量を増やしたりと、さまざまな策を講じる人も多いだろう。
しかし、コレステロール対策は、「〇〇をすればいい」と一筋縄でいくものではない。なぜなら、第1回で紹介したように、コレステロールは人間の体にとって必要な成分だからこそ、再生産する仕組みが備わっており、体の中に残りやすいからだ。それに、コレステロールはエネルギーにならないから、糖や中性脂肪と違って、運動しても単純に減るわけではない。また、コレステロールには大きく、悪玉のLDLコレステロールと善玉のHDLコレステロールがあることは第1回で解説した。悪玉は減らしたいが、善玉は増やしたい。果たして、そんなことが実現できるのだろうか。
最終回となる今回は、コレステロール対策のエキスパートである帝京大学名誉教授の寺本民生さんに、悪玉のLDLコレステロールを下げる対策、そして善玉のHDLコレステロールを上げる対策を聞いていこう。寺本さんは、「血液中の脂質バランスが崩れて起こる脂質異常症には、悪玉のLDLコレステロールが高い、あるいは善玉のHDLコレステロールが低いなど、いくつかのタイプがあります。それぞれ対策が異なるので、自分の状態に合った手を打つことが必要です」と話す。
コレステロール対策のポイントは以下の通り。まずは、悪玉のLDLが高い人向けの対策から見ていこう。

運動に励んでも、悪玉のLDLコレステロールを減らす効果は少ない
脂質異常症は、みなさんご存じのように“生活習慣病”の1つ。日々の過食や運動不足といった生活習慣の積み重ねが原因なので、バランスの取れた食事と適度な運動、この両方を実践すれば効果が出ると思うかもしれない。
だが、悪玉のLDLコレステロールが高い人は、運動に励むだけでは効き目が薄いと寺本さんは話す。お腹にたまる内臓脂肪のような「中性脂肪」は、運動すれば燃焼して体内で分解されるが、コレステロールの場合はそうはいかない。冒頭で少し触れたように、いくら運動しても、コレステロールは体内で分解することができないのだ。