隠れた悪玉を明るみに出す「non-HDLコレステロール」とは
第2回 健診のコレステロール値、どこからどう読めばいい?
田中美香=医療ジャーナリスト
コレステロールは血管の老化を進める要因の1つ。しかし、基準値を超えても自覚症状はないため、対策を講じずに放置しがちだ。異常な状態を放置すると、動脈硬化が進み、心筋梗塞や狭心症のリスクが高まっていく。そのリスクを判断する指標となるのが健康診断の結果だ。だが、コレステロール欄には、複数の項目があって分かりにくい上に、2018年度からは「non-HDLコレステロール」という新たな項目が加わった。第2回となる今回は、健診結果の読み解き方、そして動脈硬化の進行度合いを見る検査について、帝京大学名誉教授の寺本民生さんに聞いていく。

多くの人が健康診断の結果を気にするコレステロール。一般に「体に悪い脂質」というイメージがあるが、実は細胞膜やホルモンなどの原料であり、人間が生きていく上で欠かせない物質だ。不可欠な成分だからこそ、体内にためて再生産する仕組みがあり、過剰になると体に悪影響を及ぼす。だが、コレステロール値が多少上がっても痛くもかゆくもないから、多くの人はつい放置してしまう。その間に動脈硬化が確実に進み、突然死のリスクが高まっていく。
コレステロール対策というと、コレステロールを多く含む食品を避けることを第一に考える人が少なくない。だが、悪玉のLDLコレステロールを低く抑えるためには、実は動物性脂肪を控えることが最も大切。なお、食事中のコレステロールの影響は個人差が大きいことなどから、現在は「日本人の食事摂取基準」(厚生労働省)で上限が設定されなくなったが、いくらでも食べていいわけではない。
第1回では、このようなコレステロールにまつわる情報を一から整理して解説した。コレステロールの正体を理解したところで、今回は、自分のコレステロール値はどうなのか――健診結果をどう見て、どう判断すればいいかを、コレステロール対策のプロフェッショナルである帝京大学名誉教授の寺本民生さんに聞いていこう。
健診結果に印刷された数字には、血中のコレステロールを示す項目が複数あり、低いほうがいい項目がある一方で、高いほうがいい項目もあって分かりにくい。さらに、2018年度から「non-HDLコレステロール」という新しい項目も加わった。これはどういう指標なのか。今回は、これらコレステロールにまつわる検査の数値を、1つずつ読み解いていくことにしよう。
一番に注目すべきは、悪玉のLDLコレステロール値
40代後半の男性の健康診断(人間ドック)結果を例に、血中コレステロールの項目を具体的に見てみよう。

第1回で解説したように、大きく分けて、血中のコレステロールにはLDLコレステロール(悪玉)とHDLコレステロール(善玉)がある。LDLコレステロールは肝臓から全身の細胞にコレステロールを送る役割を担うが、血中のLDLコレステロールが過剰になると行き場を失い、血管壁にコレステロールを押し込んでしまう。だから悪玉と呼ばれる。一方、善玉のHDLコレステロールは、血液の中で過剰になったLDLコレステロールを回収し、肝臓へと運ぶ、掃除屋の役割を担っている。掃除をさぼると部屋にゴミがたまるのと同じで、HDLコレステロールが減ればLDLコレステロールは血管にたまり、血管を傷めてしまう。
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