老化防止にたんぱく質はどれだけ必要? 注目は「ロイシン」!
第2回 「たんぱく質1日70g」をクリアする簡単ポイント計算法
柳本 操=ライター
老化を防ぎ、健康寿命を延ばすために「食事」に求められるものは何か――。近年の研究によって、そのカギとなるのが「たんぱく質」であることが分かってきた。では、私たちはたんぱく質を「どのくらい」「どのように」とっていけばいいのだろうか。そしてたんぱく質以外で重視すべきポイントはあるのだろうか。高齢者のフレイル(虚弱)や糖尿病対策に詳しい東京都健康長寿医療センター副院長・内科総括部長の荒木厚さんに、具体的に対策を聞いていく。

年をとっても元気に歩き続けたい。老け込みたくない――。老化を防ぎ、健康寿命を延ばしたいというのは誰もが共通に願うこと。その実現には、体を構成する栄養を得る源である「食事」が重要になるのは言うまでもない。そのために、私たちは具体的にどのような食生活に変えていけばいいのか。
第1回では、シニア期に入ったら食事の内容を変えていく必要があることが、近年の国内外の研究から明らかになっていることを紹介した。特に重要となるのが「たんぱく質」。たんぱく質の摂取は、筋肉量や歩行速度、下肢機能の維持と密接に関係しており、摂取不足は要介護のリスクを高める。さらには、体の免疫力の低下にもつながり、肺炎などの深刻な病気を引き起こすリスクも高まる。
私たちは、中年期から高齢になるにしたがって、食べ過ぎを控える「メタボ対策」から、たんぱく質をしっかりとる食事内容にギアチェンジすることが求められるようになる(詳しくは第1回をお読みください)。
高齢者のフレイル(元気な状態と要介護の中間)や糖尿病対策に詳しく、『60歳からの筋活ごはん』(女子栄養大学出版部)などの執筆・監修を手掛ける東京都健康長寿医療センター副院長・内科総括部長の荒木厚さんは、「シニア以降は、食事の力点はたんぱく質に置いてください」と話す。
第2回となる今回は、どのくらいたんぱく質をとればいいのか、それを実現するためには、どの食材をどのくらい摂取すればいいのかなど、具体的な対策を荒木さんに聞いていく。
シニアのたんぱく質の必要量はどのくらい?
まずは、シニアに求められるたんぱく質の摂取量から。前回紹介したように、シニアが筋肉を維持し、老化を遅らせるには、どのくらい摂取するのが望ましいのだろうか。
一般的な成人を対象としたたんぱく質の摂取量は、体重1kg当たり1日0.8~1.0g程度が推奨されている(*1)。これは運動習慣がないビジネスパーソンなどを対象としたもので、区切りよく「体重1kg当たり1日1g」と覚えておけばいいだろう。体重60kgの人なら1日60gだ。

では、シニアの場合はどの程度必要なのだろうか。
知っておきたいのは、高齢者では、若い人と同じ量のたんぱく質を摂取しても、筋肉のたんぱく質を合成する力が弱まっているということ。「高齢者になるとアミノ酸(たんぱく質の構成要素)の利用効率が落ちてきます。若い人と同じようにたんぱく質合成を保つ(=筋肉量を保つ)には、より多くの量が必要になります」(荒木さん)