5年生存率わずか10%、怖い膵がんを小さいうちに見つける方法
第3回 こんな人は膵がんに注意! 早期発見のために受けるべき検査とは
田中美香=医療ジャーナリスト
早期発見が難しい、見つけても手術できないことが多い、手術できても転移することが多い…こうした特徴ゆえ、膵臓がん(膵がん)は「がんの王様」と呼ばれる。膵がんになるリスクが高いのはどんな人か? 一刻も早く見つけるために受けるべき検査は何か? 特集第3回となる今回は、膵がんを避けて通るために知っておきたいポイントをまとめていこう。
膵がんの5年生存率は10%、胃の異常だと思われて発見が遅れる例も
膵臓の病気には厄介なものが多い。第2回でお伝えしたように、急性膵炎では激痛に襲われ、慢性膵炎では膵臓の細胞が壊れて線維化し、機能が低下してしまう。どちらもかかりたくない病気だが、さらにその上を行くのが膵がんだ。
近年の診断・治療技術の目覚ましい進歩により、がん全体の5年生存率(診断から5年後に生存している患者の割合)は65%まで上がってきた。にもかかわらず、膵がんの5年生存率だけは依然として低く、わずか10%にすぎない。「がんの王様」とも、「21世紀に取り残されたがん」とも呼ばれている。
膵がんがこれほど悪名高い理由は、膵臓の持つ性質によるところが大きい。第1回で解説したように、膵臓は胃の裏側にあるため、異常があっても察知されにくい。さらに、胃のように筋層に覆われていないため、がんができるとすぐに周辺のリンパ節や臓器に広がってしまう。そうした特性ゆえ、膵がんは発見が遅れやすく、診断されても手術できる可能性が非常に低いのだ。
場所:膵臓は胃の裏側にある
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膵臓に異常があっても胃の不調と思われやすい
構造:膵臓には厚い防波堤(筋層)がない
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がんができれば、容易に周辺に広がっていく
膵がんの患者を診療する機会の多い、東京医科大学消化器内科学分野主任教授の糸井隆夫さんは、日ごろ残念に思うことがよくあるという。
「胃が痛いと思って内視鏡検査(胃カメラ検査)を受けた人が、異常がなくて安心したものの、いつまでたっても体調がすぐれず、ほかの臓器を調べてみると、すでに肝転移を起こした大きな膵がんが見つかった…こんな例が少なくないのです」(糸井さん)
それほど見つけにくく進行も早い膵がんは、一体どのような要因から起こり、早期に見つけるにはどうすればいいのだろうか。
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