老化を食い止め、病気を未然に防ぐ「抗加齢ドック」の威力
第3回 医師によるアドバイスと継続受診で「動脈硬化の進行も緩やかに」
梅方久仁子=ライター
「人生100年時代」と言われる今、ただ長生きをするのではなく、いかにして健康寿命を延ばすかが重要になってきた。人間ドックの役割も、既にかかっている病気を発見するだけでなく、将来かかる病気を事前に見つけ、対処することへと広がってきている。特集第3回では、「老化」を病気発生のリスクととらえ、老化の進み具合を調べてその人にあった病気の予防を指導してくれる「抗加齢ドック」を取り上げる。
この特集では、「100歳まで健康に生きる」ための人間ドック活用として、個人の病気のリスクを正確に判断し、予防に取り組むための方法を紹介してきた。
前回は、血中のアミノ酸濃度のバランスから、がんや糖尿病、脳卒中・心筋梗塞のリスクを判定する「アミノインデックス検査」を取り上げた。今回は、「老化」を病気の最大のリスクととらえ、老化の進み具合を調べてその人に合った病気の予防を指導してくれる「抗加齢ドック」を紹介する。
老化は、病気発生の最大のリスク

抗加齢ドックは、体の状態を詳しく調べ、老化が進んでいる部分を見つけたら、その状態に応じた生活習慣の改善、サプリメントの指導、薬物療法などで対応しようとするものだ。
老化した部分を若いころの状態に戻せれば万々歳だが、実際には難しい。それでも、老化の進行を抑え、現状を維持するだけでも、病気の発生の予防には十分有効だと言える。
「病気を早期発見しても、いったん病気になってしまうと、なかなか元の状態には戻りません。まだ病気になっていない段階で病気のリスクを見つけ出して対処することが重要です」と、東海大学医学部付属東京病院(以下、東海大東京病院)の院長かつ健診センター長で、日本で最も早い時期に抗加齢ドックを開設した西崎泰弘氏は語る。
「例えば生活習慣の影響で活性酸素の値が高い状態にあっても、自覚症状は何もありません。ところがその状態を放置していると、動脈硬化が進んだり遺伝子が傷ついたりして、脳梗塞、心筋梗塞、がんなどの病気のリスクが高まります。そこで抗加齢ドックで活性酸素の値を調べてアドバイスを受ければ、病気になる前に生活習慣の改善などに取り組めます」(西崎氏)。
活性酸素は、体内でDNA(遺伝子)や脂質、たんぱく質、酵素などと反応し、さまざまなダメージをもたらす。活性酸素による酸化ストレスは、がん、糖尿病などの生活習慣病といった疾病の発症にも関わっていると考えられており、活性酸素は今や、老化をもたらす“犯人”とみなされている。
そんな活性酸素による遺伝子の損傷具合を、抗加齢ドックでは血液検査などで測定し、そのレベルに応じて生活習慣の改善を提案する。活性酸素を抑えるためには、抗酸化作用のあるビタミンを多く含む食材を食べたり、禁煙や適度な運動が有効だ。