認知症リスクを減らす食事の鉄則! カギとなるたんぱく質と多様性
第3回 葉酸、ビタミンD、オメガ3も意識して摂取しよう
伊藤和弘=フリーランスライター
「この病気だけにはなりたくない」と多くの人が考える認知症。本特集では、アルツハイマー病が20~30年にわたってゆっくり進行する病気であること、そして生活習慣次第で「逃げ切れる」可能性があることをお伝えしてきた。今回は、前回ご紹介した「運動」と並び、認知症対策のもう一つのカギとなる「食生活」の対策について、国立長寿医療研究センター もの忘れセンター長の櫻井孝さんに聞いていく。

高齢化とともに増加の一途をたどる認知症患者。認知症の中でも最も多いアルツハイマー病は、主に脳にアミロイドβというたんぱく質がたまることなどにより神経細胞が壊れていく病気だ。残念ながら、現時点では認知症を治療する薬は開発されていない。
だが、あきらめることはない。第1回で解説したように、40~50代といった若い年代から生活習慣に気をつけていれば、発症する前に天寿をまっとうして、「逃げ切る」ことができる可能性がある。そして、もの忘れが多くなり、認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)と診断されても、通常の認知機能に戻る人もかなりいることも事実だ。
認知症のリスクを下げる要因(逆に上げる要因)は多くあるが、代表的なのが運動や食生活、知的活動、禁煙、社会的孤立を避けるなどがある。第2回では主に運動の効果やその実践法を紹介した。最終回となる今回は、「食事」を中心に睡眠など他に気をつけるポイントを紹介していこう。
料理はいい脳トレ! 菓子パンなどで食事を済ませるのはNG!
認知症対策に限らず、がんの対策でも糖尿病対策でも、最も気になるのは「食事」という人は多いだろう。実際、「〇〇は発がんリスクを高める」とか「××は老化防止にいい」「血管を若返らせるには△△」などという“食べ物の話”は関心が高く、メディアやネット上にあふれている。食事面での対策は、手軽に実践できることも関心が高い理由の一つだろう。
国立長寿医療研究センター もの忘れセンター長の櫻井孝さんは、「食事の内容を見直していただくと同時に、自分で『食事を作る』という習慣も大切にしてください」と話す。
「食事を作る」という一連の作業は、食事のメニューを考え、買い物に行き、食材を選び、そして自宅で段取りを考えながら調理する、といった具合に、自ら頭を使い、体を使う行動が多く含まれる。

「料理は、デュアルタスクやトリプルタスクの連続です。指を細かく動かす動作も伴います。買い物に行くのも体を動かしますし、計算で頭を使います。つまり、料理という一連の作業はとても頭を使うのです。そして作ったものがおいしければ、それが“脳への報酬”になります。家の中で黙々とドリルをやるよりも、料理はよほどいい脳のトレーニングになりますよ」と櫻井さん。
しかし現実には、「病院にいらっしゃる高齢者の方に話を聞くと、食事を菓子パンなどで簡単に済ます人がとても多いのが現実です。栄養面もさることながら、食事を準備するというところから自ら実践する“食の営み”を大切にしてください」と櫻井さんは話す。
人間の機能は使ってこそ保たれる。こうした作業を疎(おそろ)かにすると、人間の機能は急速に衰える可能性があるわけだ。