悪性の脂肪肝「NASH」も、体重が減れば改善する!
第2回 食事編:総カロリーを抑えてたんぱく質を多めに
伊藤和弘=ライター
国内の推計患者数は3000万人にも上る、非アルコール性の脂肪肝(お酒の飲み過ぎとは関係なく起こる脂肪肝)。その成り立ちには、肥満だけでなく、筋肉の減少や質の低下が深くかかわっていることが分かってきた。脂肪肝に詳しい筑波大学附属病院消化器内科教授の正田純一さんに、3回にわたって脂肪肝の成り立ちや予防・改善の方法を聞いていく本特集。今回は「脂肪肝を改善する食事法」を解説していく。
良性の脂肪肝と悪性の脂肪肝、どうすれば見分けられる?
前回説明したように、最近はアルコールが原因の脂肪肝よりも、カロリーのとりすぎによる非アルコール性の脂肪肝が増えており、推定患者数は3000万人といわれている。「非アルコール性の脂肪肝の大半は良性の単純性脂肪肝ですが、1~2割が悪性のNASH(ナッシュ;非アルコール性脂肪肝炎)に発展し、さらに進行すると肝硬変や肝がんにつながります」と話すのは、筑波大学附属病院消化器内科(肝臓生活習慣病外来担当)教授の正田純一さんだ。
脂肪肝は、人間ドックなどで行われる腹部の超音波検査で診断される。一般的な健康診断では超音波検査まで行われることは少ないが、血液検査で肝機能の数値が悪かった場合、その結果を持って消化器内科を受診すれば、超音波検査を受けることは可能だ。
だが、超音波検査だけでは、それが単なる脂肪肝なのか、炎症や線維化を起こしているNASHなのかは判断できない。正確にNASHを診断するには、お腹に針を刺して肝臓の組織を少量採取する「肝生検」が必要となる。しかし肝生検を行うためには入院する必要があり、体への負担も大きくなる。
その肝生検に代わって、現在利用されるようになってきているのが、エラストグラフィという検査だ。エラストグラフィは、硬い物質の中では速く、軟らかい物質の中では遅く伝わる「剪断波」の性質を利用して、肝臓の線維化を評価する新しい検査手法だ(関連記事「危ない脂肪肝を見分ける、針を刺さない検査法って?」)。この検査を行えば、組織を直接採取しなくても、肝臓に脂肪がどれくらいたまっているかとともに、肝臓の硬さも調べることができる。肝臓に炎症が起きて肝細胞が破壊され、線維化が進み硬くなっているかが分かるわけだ。

エラストグラフィにはMRI(磁気共鳴画像法)を用いる方法と超音波を用いる方法とがある。「MRIのほうが正確に診断できますが、置いている医療機関が少ないうえ、費用も時間もかかります」と正田さん。超音波を使うエラストグラフィは数分で終わるし、保険が適用されるので費用も安く済む。
自分が脂肪肝だと分かったら、一度は必ず肝臓の専門外来を受診し、NASHの可能性がないかどうかを確認しよう。その上で、脂肪肝改善のための対策を医師とともに立ててほしい。