病気にならずに健康に長生きしたい――。これはミドル・シニア層なら誰もが共通に思っていることだろう。若さを保つ「アンチエイジング」の究極の目標はここにある。そして今、アンチエイジング効果を示す食品や運動などに関する研究成果が世界的に蓄積されている。
本特集では、最新研究に携わる専門家に、今すぐ始められる最新アンチエイジング術を聞いていく。第1回となる今回は、「酸化とアンチエイジング」の専門家・東海大学 スポーツ医科学研究所の石井直明教授に話を聞いた。
細胞の機能を衰えさせ、老化を進める要因とは?

「見た目の美しさや若々しさは生きる原動力になるもの。全身の細胞の状態が健康なら、肌もきれいになる」と話すのは、東海大学の石井直明教授。
「細胞の働きが低下すると肌の新陳代謝のリズムも乱れる。体内の各臓器の機能が衰えてくるし、神経の伝達速度が遅くなり、基礎代謝も低下する。このように全身の機能が衰えることを『老化』という」(石井教授)。
では何が細胞の機能を衰えさせ、老化する要因となるのか。25年以上にわたり老化の基礎研究を行ってきた石井教授は、「遺伝子研究などからわかったことは、インスリンを出しすぎると確実に老化が進むということ」と話す。
「膵臓から分泌されるインスリンは、炭水化物や砂糖などが消化されてできるブドウ糖をエネルギーとして使ったり貯蔵しておくため、細胞内に取り込む役割を担っている。問題は、現代人の多くがお菓子やジュースなどで糖をとり過ぎる傾向にあること」(石井教授)。
一度に大量の糖をとると、それを処理するためインスリンがたくさん出るからだ。そのうえ過剰な糖は、体内のたんぱく質と結合して変性・劣化させ、『糖化』を起こす。糖化は肌のたるみや動脈硬化、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)など、老化や病気の要因となる」(石井教授)。
糖のとり過ぎは活性酸素を大量に発生させる!
さらに、糖のとり過ぎは活性酸素の大量発生も招くという。
「活性酸素は細胞内のミトコンドリアがエネルギーを産生する過程で発生し、本来はウイルスや細菌などを攻撃して体を守る役割を担っている」(石井教授)。
「しかし、糖がたくさんあるとそれをどんどんエネルギーに変えようとするため、活性酸素も増加する。大量の活性酸素は正常な細胞まで攻撃し、ダメージを与える。この細胞の酸化が、シミやシワなどの肌の老化や生活習慣病などの要因となる」(石井教授)。糖をとり過ぎないようにするのはもちろん、「何を食べるか」ということもアンチエイジングのうえで重要だ。それを示すのが、石井教授がセンター長を務めていた東海大学大学院ライフケアセンターが2009年9月から3カ月間、高齢者を対象に行った健康調査。「毎日運動しているのに、なぜか血液状態が悪い人がいる」という意外な結果が出たという。
「運動は血流を促進するため、血液状態が良くなるはずなのに、なぜそういう結果になったのか。詳しく調べてみると、偏食気味で、脂っこい食品を好んで食べているなど、普段の食生活に問題があることがわかった」(石井教授)。
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