老化を食い止め、健康で長生きしたい――。これは誰もが共通に思っていることだろう。そして今、若さを保つ「アンチエイジング」効果を示す食品や運動などについての研究成果が世界的に蓄積されている。本特集では、最新研究に携わる専門家に、今すぐ始められる最新アンチエイジング術を聞いていく。今回は、生体リズムの専門家である東京医科歯科大学の服部淳彦教授に話を聞いた。老化の速さは、体内時計の乱れと密接に関係しているという。

「老化のスピードには、体内時計の乱れが大きく関係していることが、近年の研究でわかってきた」と話すのは、生物の生体リズムに詳しい東京医科歯科大学教養部の服部淳彦教授。
体内には、体を活動や休息に適した状態にしたり、体温やホルモン分泌を変動させる1日のリズムがある。このリズムをつくるためのシグナルを発するのが体内時計だ。体内時計は時計遺伝子によってコントロールされている。
「時計遺伝子に何らかの異常が起きて体内時計が乱れると、老化のスピードが速まったり、メタボリックシンドロームになりやすくなることが動物を使った研究からわかっている。また、昼夜交代制勤務など生活リズムが不規則な人は、生活習慣病などのリスクが高いという報告もある」(服部教授)。
老化予防にはメラトニンをきちんと分泌させることが大事
そこで力を発揮するのが、体内時計の情報を伝えるメラトニンという物質だ。
「メラトニンには基本的に、夜間に分泌量が増え、昼間の分泌量は少ないという明確なリズムがある。全身の細胞に“夜が来た”という時刻情報を伝え、睡眠や休息を促す役割を担っている」(服部教授)。
睡眠は新陳代謝を促す成長ホルモンの分泌を高める。老化予防にはメラトニンをきちんと分泌させて深い眠りを得ることが重要だが、「夜に強い光を浴びるとメラトニンの分泌が抑制されて、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなりやすい」(服部教授)。

「とくに気をつけたいのが就寝前のスマートフォン。液晶画面のブルーライトが網膜に強い刺激を与え、脳に『朝だ』と誤った認識をさせてしまう」(服部教授)。
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