なぜ太っていないのに異常値に? 問題は「筋肉の質」にあった
第1回 皮下脂肪や内臓脂肪が少なくてもたまる「異所性脂肪」とは
梅方久仁子=ライター
生活習慣病の予備軍として、世間にすっかり浸透した「メタボ(メタボリックシンドローム)」。とはいえ、日本人には、太っていないのに血糖値や血圧が高い、という人が少なくない。「血糖値が高いけど、メタボではないから大丈夫なのかな?」「薬を飲まずに血圧を下げたいけれど、やせている自分はどうすればいいのか分からない」など、「太っていない人の異常値」の悩みはさまざま。本特集では、最新の研究結果を基に、その原因と対策を探っていく。
年相応にややたるんできてはいるものの、肥満ではない。健康には問題ないと思っていたのに、血糖値や血圧が高いと言われてしまった。かなり太めのあの人は正常値なのに、どうして自分が?
そんな悩みを抱える人が、実は少なくないという。世の中は「メタボ撃退!」の掛け声ばかりが目立つが、それほど太っていない人の異常値は、いったい何が問題なのか。これ以上やせる必要がないのに異常値を指摘されたら、どうすればいいのか。
本特集では、心筋梗塞や脳卒中などの生活習慣病に強く関連する、血糖値、血圧、脂質について、「太っていない人の異常値」の対策を探っていく。第1回は、糖尿病治療の研究を進める順天堂大学大学院スポートロジーセンター・代謝内分泌内科学准教授の田村好史氏の話を基に、太っていなくても生活習慣病になってしまう仕組みについての最新知見を紹介しよう。その原因のひとつとして近年注目されているのが、筋肉の質だ。
日本人は太っていなくても糖尿病などになりやすい
糖尿病などの生活習慣病は、肥満体、いわゆるお腹の突き出した“メタボ体型”の人に多いというイメージがある。しかし、日本人を含む東アジア人では、実際にはそうでもない。
「肥満の人が生活習慣病になりやすいのは、事実です。ただ、日本人を含むアジア人で糖尿病になる人の平均BMI(*1)は23(kg/m2)くらいで、必ずしも肥満の人ばかりではありません。東アジア人は、太っていなくても糖尿病などの生活習慣病になりやすいことが分かっています」と田村氏は言う。では、なぜ太っていなくても生活習慣病になってしまうのだろう。