あなたを悩ませる冬の「かゆみ」、その元凶は?
第1回 乾燥、バリア機能の低下、「かきすぎ」が冬のかゆみを引き起こす
梅方久仁子=ライター
冬になると増えてくる、皮膚のかゆみ。皮膚にこれといって異常の見られないかゆみには、「空気の乾燥」「加齢によるバリア機能の低下」に加えて、「かきすぎ」や「間違った生活習慣」が深く関係しているケースが多い。本特集では、冬に増えるかゆみの原因と、皮膚を守るための正しい対処法を、皮膚科専門医の小林美咲氏(小林皮膚科医院院長)に詳しく聞いていく。
冬になるとなんだか体がかゆい…。そんな現象を、多くの人が経験しているに違いない。若いころはさほど気にならなくても、年齢を重ねるにしたがって、かゆみに悩まされることが増えてくる。これといって皮膚に異常がないように見えるのに、かゆい。かけばかくほどかゆくなる。どうすればこの不快なかゆみがなくなるのだろうか。何か悪い病気が隠れていないかも心配だ――。
そんな「冬のかゆみ」の悩みに応えるため、本特集では、皮膚のかゆみのメカニズムや対処法に詳しい皮膚科専門医の小林美咲氏(小林皮膚科医院院長)に、悩ましいかゆみの原因と対処法を詳しく聞いていく。第1回は、そもそもかゆみとは何かというところから始めよう。

かゆみは、皮膚の異常を知らせるシグナル
「かゆみは、皮膚の異常を知らせるシグナルです」と小林氏は言う。「例えば、皮膚の上に虫が止まるとむずかゆいので、思わず手で払いますよね。すると、虫を取り除くことができます。つまり、かゆみはかく行為(掻破)を引き起こして体を守ろうとする、生体防御反応のひとつなのです」。
かゆみの原因は多岐にわたるが、かゆみを引き起こす体のメカニズムによって、大きく中枢性のかゆみと末梢性のかゆみに分けられる。
皮膚の異常を知らせてくれるのは、末梢性のかゆみだ。虫刺されや摩擦、異物との接触など、皮膚がなんらかの刺激を受けると、そのシグナルを受け取った皮膚のマスト細胞(肥満細胞)からヒスタミンが放出される。このヒスタミンが知覚神経に作用して、その部位にかゆみが生じる。「受診の際に、はっきりと『ここがかゆい』と訴えられる患者さんの場合、末梢性のかゆみです」(小林氏)。
一方、中枢性のかゆみは、体の内部の病気によって、「オピオイド」という物質の作用が増強することなどによって起こる。体の中でかゆみを起こすため、どこか特定の場所がかゆいのではなく、全体にむずかゆく感じるのが特徴だ。中枢性のかゆみを感じやすいのは、腎臓病で血液透析を受けている人や、糖尿病の人、肝臓が悪い人など。アトピー性皮膚炎のかゆみ、薬剤の副作用によるかゆみも、中枢性のかゆみに分類される(表1)。
末梢性のかゆみ | 中枢性のかゆみ | |
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かゆみの特徴 | 皮膚の特定の部位にかゆみを感じる | 全体的にかゆみを感じる |
主な原因 | かぶれ、じんましん、虫刺され、乾燥、摩擦、肌のバリア機能の低下など | 腎臓や肝臓の病気、糖尿病、アトピー性皮膚炎、薬剤の副作用など |