食後、右向きに寝るのは危険!? 誤嚥を防ぐポイントはこれだ
第3回 食事や食後の“姿勢”に注意! 風邪やインフル予防も大切
伊藤和弘=フリーランスライター
日本人の大きな脅威となっている誤嚥性肺炎。本特集はこれまで、その実態と、取り組むべきトレーニングやワクチンなどの基本的な対策を紹介してきた。最終回となる今回は、これらに加えてぜひ実践していただきたい対策を一挙に紹介していこう。隠れ誤嚥の原因の1つ「ラクナ梗塞」を防ぐ生活習慣、「食べる姿勢」「食後の過ごし方」、そして肺炎につながる風邪やインフルエンザの予防など、肺炎リスクを下げるためにできることはまだまだある。

本特集ではこれまで、高齢化が進んだ日本人を襲う肺炎リスクの実情と、肺炎から身を守る対策について紹介してきた。私たちに忍び寄る「誤嚥性肺炎」を遠ざけるために、まずは第2回で紹介した3つのトレーニング、そして肺炎球菌ワクチンの接種と口腔ケアをぜひ実践していただきたい。
これらが対策の基本になるが、誤嚥性肺炎のリスクを下げるためにできることはまだまだある。例えば、嚥下反射や咳反射の衰えを防ぐためには、その原因になる脳梗塞の一種「ラクナ梗塞」(詳細は第1回を参照)を作らない、つまり動脈硬化を予防する生活習慣が大事になる。さらに、「食べる姿勢」「食後すぐに横にならない」といった日常のちょっとした注意で誤嚥のリスクを下げられる。また、これからの季節に増える風邪やインフルエンザの予防も肺炎予防につながる。
最終回となる今回は、呼吸器疾患のエキスパートとしてテレビなどでもおなじみの池袋大谷クリニック院長の大谷義夫さんに、これらの対策について聞いていこう。肺炎リスクの高い高齢者はもちろん、働き盛りの40~50代の方も、将来の誤嚥性肺炎のリスクを下げるため積極的に取り組んでほしい。
動脈硬化を防ぐ生活習慣が、将来の肺炎リスクを下げる
第1回で、誤嚥には、本人が誤嚥していることに気付いている「顕性誤嚥」と本人が気付かない「不顕性誤嚥」(隠れ誤嚥)があると解説した。前者は食事などで食べ物や飲み物が気管に入るというもの。後者は、睡眠中などに唾液や胃酸が気管に流れ込んで誤嚥を起こすものだ。
誤嚥性肺炎で重要となるのが後者の「隠れ誤嚥」だ。本人が分からないだけに防ぐのが難しい。この隠れ誤嚥の原因の1つにラクナ梗塞と呼ばれる、小さな脳梗塞がある(詳しくは第1回を参照)。
このラクナ梗塞は、日常生活が不自由になるほどの影響はないが、「嚥下反射(飲食物を食道に飲み込むこと)や咳反射(異物が気道に入ったときに咳をして出すこと)の低下に関係している」と大谷さんは指摘する。その結果、唾液や胃酸が気道に入っても咳が出ず、肺への細菌感染を許してしまうわけだ。
脳梗塞はご存じのように、脳の血管が詰まることにより起こる。そして脳梗塞の原因に、動脈硬化があることは広く知られている。つまり、ラクナ梗塞を防ぐには、すなわち動脈硬化を防ぐことが大事になるわけだ。「のどの筋肉や呼吸筋を鍛えるのももちろん大切ですが、生活習慣病を予防することもとても大事です」(大谷さん)
日経Goodayでもこれまで繰り返し紹介してきたように、動脈硬化は万病のもと。高血圧、高血糖、脂質異常、肥満などにより着実に進行する。いわゆる「メタボ」な人は、動脈硬化が進みやすいので、食生活を改め、定期的な運動を心がける(運動は血管をしなやかにする)ことが大切。喫煙も動脈硬化を進めるので、禁煙も不可欠だ。
このような生活習慣病にならない健康的なライフスタイルが、ラクナ梗塞を防ぎ、ひいては誤嚥性肺炎のリスクも低くしてくれる。将来の肺炎のリスクを下げるためには、当然、40~50代の働き盛り世代からの生活習慣が大事になる。
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