目の前で心停止! 救急車を呼ぶだけでは救命率1割
第4回 基本は「心臓マッサージ+AED」、AEDを使えば半数以上が助かる
田中美香=医療ジャーナリスト
ある日突然、目の前にいる人が倒れてしまったら、あなたはあわてずに行動できるだろうか。心臓マッサージも人工呼吸も、なかなか実践する機会がないだけに、パニックになる人も多いだろう。最終回となる今回のテーマは、目の前で倒れた人を、突然死から救うための対処法。あちこちで見かける割に意外と知らない、AED(自動体外式除細動器)の絶大な効果と意外に簡単な操作法についても紹介していこう。
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目の前で心停止! 救急車を呼ぶだけでは救命率1割
救急車が来るまでの時間は平均8.5分、ただ待つだけでは手遅れに
持病もなく元気に過ごしていた人が突然失神してしまった、そんな場面に遭遇すれば、誰でも「早く救急車を呼ばなければ」と思うに違いない。もしそれが突然死の始まりだとしたら、119番通報は1秒でも早いほうがいい。
万一、それが突然死の多くを占める「心臓突然死」であれば、緊急度はさらに高い。第1回で紹介した危険な不整脈、「心室細動」から心停止を起こせば、たった数分で死に至ることもある。現在、救急車の到着までにかかる時間は平均8.5分。救急車が到着してから心肺蘇生を行っても、救命が間に合わない可能性もある。目の前にいるあなたの行動が、その人の生死を左右する局面も大いにあり得る。
日本AED財団理事長の三田村秀雄さん(国家公務員共済組合連合会立川病院病院長)は、「今後、救急車の到着時間が長くなることはあっても、早まることはないと考えたほうがいいでしょう」と厳しい現実を語る。
「救急車が到着するのにかかる時間は、ここ数年は少し鈍ってきていますが、全体で見れば年々延びています(図1)。理由は、重症でないにもかかわらず、救急車を呼んでしまう人が多いからです。例えば、軽度の熱中症で救急車を呼ぶ人が増えれば、その地域の管轄の救急車が出払ってしまいます。別の地域から呼ぶことになると、さらに時間は長引くでしょう。救急車が来るまでの間、居合わせた人が心肺蘇生に努めても、8.5分以上も命をもたせるのは大変なことです」(三田村さん)
そんな厳しい状況で救急車を待つ間、命をつなぐために素人でもできることは何だろうか。一刻を争う状況で対処する方法について、詳しく見ていこう。