心臓突然死が多いのは「冬の朝」「月曜日」「急な運動」
第2回 心臓突然死のリスクは減らせる
田中美香=医療ジャーナリスト
ある日突然、元気に過ごしていた人が亡くなってしまう突然死。その多くを占める「心臓突然死」は、心筋梗塞や狭心症などの心臓の病気がもととなることが多く、その火種は思わぬところに転がっている。今回は、冬の朝のゴルフがなぜ危険なのか? スポーツ観戦で突然死を起こすのはなぜ?といった具体例を交えながら、心臓突然死を誘発する危険因子を探っていこう。
第1回
第2回
心臓突然死が多いのは「冬の朝」「月曜日」「急な運動」
第3回
第4回
「突然死」とは、突然の病気によって、発症から24時間以内に亡くなってしまうことを指す。その多くを占める「心臓突然死」では、さらに短い1時間以内、あるいは数分で亡くなることも珍しくない(第1回「一瞬で命を奪う『突然死』、その背後にある危険な不整脈とは?」参照)。最近は、AED(自動体外式除細動器)を使った迅速な処置で一命を取り留めるケースも増えているものの、「ひとたび異常が起こってからの救命は非常に困難だ」と肝に銘じておいたほうがいいだろう。
であれば、私たちはどのようにして心臓突然死を防げばいいのだろうか。もし心臓突然死が起こりやすい場面に何らかの特徴や傾向があれば、対策を立てることもできそうだが、そんなものはあるのだろうか。心臓突然死を熟知する循環器専門医、三田村秀雄さん(国家公務員共済組合連合会立川病院病院長)は、「絶対ということではありませんが、心臓突然死を起こすには一定の特徴や傾向があり、それらを回避すれば突然死のリスクを下げることはできます」と話す。
心臓突然死は、どんな人が、どんな状況で起こしやすいのか、三田村さんにさらに詳しく聞いていこう。
生活習慣病からくる「動脈硬化」が心臓突然死のリスクを上げる
突然死は、元気に過ごしていた人がある日突然倒れることが多く、予測することは極めて難しい。しかし、三田村さんによれば、心臓突然死を起こす人は、特徴的な病気を持っているなど、ある程度の傾向があるという。その病気とは、心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患を引き起こす動脈硬化だ。虚血性心疾患とは、心臓に栄養を送る冠動脈が狭くなったり詰まったりするために、酸欠状態に陥る病気だ(第1回参照)。
「若い人の場合は遺伝などに関連した心臓突然死も見られますが、成人の場合、心臓突然死のもとになるのは心筋梗塞や狭心症です。心筋梗塞や狭心症を起こす背景には、血管の壁が硬くなる『動脈硬化』が存在しています(図1)」(三田村さん)
動脈硬化にはいくつかの種類があるが、心筋梗塞や狭心症を起こすもとになるのは「アテローム性動脈硬化」だ。アテローム性動脈硬化は、冠動脈にコレステロールがたまり、それが血管内に向かってコブのように膨れた状態(プラーク)をいう。アテローム性動脈硬化があると血液が流れにくくなり、プラークが裂けて血小板の血栓が血管内を塞げば、心臓の筋肉に血液が届かなくなってしまう。

三田村さんによると、動脈硬化は加齢によっても進むが、危険因子があるとさらに悪化しやすくなるという。その危険因子とは、高血圧、脂質異常症、糖尿病、喫煙の4つ。つまり、図1の通り、心臓突然死のルーツをたどっていくと、まずは心筋梗塞・狭心症があり、その上流には動脈硬化、そして生活習慣病や喫煙などの危険因子が潜んでいるのだ。「高血圧、脂質異常症、糖尿病、喫煙。この4つの危険因子は心臓突然死の根源であり、これを改善することは、突然死から身を守るために欠かせない鉄則です」と三田村さんは強調する。
だが、これらの危険因子があるだけで、突然死になるわけではない。三田村さんは、「心臓突然死は、これらによって生じた動脈硬化に何らかの誘因が加わったときに発症します。気温や時間帯などの環境要因もその誘因となり得ます」と警告する。