一瞬で命を奪う「突然死」、その背後にある危険な不整脈とは?
第1回 ある日突然あなたを襲う、「突然死」の正体
田中美香=医療ジャーナリスト
「昨日まで元気だったあの人が、まさか…!」。テレビでよく見かける有名人の突然の訃報に、衝撃を受けたことのある人は少なくないだろう。突然死はなぜ起こるのか、どんな人や場面が危険なのか、そして、予防の手立てはあるのか――。本特集では、ある日突然あなたを襲うかもしれない「突然死」の正体について、国家公務員共済組合連合会立川病院病院長の三田村秀雄さんに詳しく聞いていく。
第1回
一瞬で命を奪う「突然死」、その背後にある危険な不整脈とは?
第2回
第3回
第4回
「突然死」は理想? それとも、なんとしても避けたいもの?
もし自分の死に方を選べるとしたら、ある日突然亡くなるか、あるいはがんなどで余命を宣告され、残された時間を有意義に使ってから亡くなるか、あなたはどちらを選ぶだろうか。「長く闘病で苦しむのはイヤなので、突然死したい」という人もいれば、「悔いの残らないよう、しっかり終活(*1)をしてから逝きたい」という人もいるだろう。ある調査では、日本人の7割以上が「ある日突然死ぬ」パターンを希望するとされ、多くの人は突然死を望む意向があるようだ(*2)。
ただし、口では“ポックリ逝きたい”と言っていても、心の底からそう願う人ばかりかというと、実際はそうとも言い切れない。日本AED財団理事長として「減らせ突然死プロジェクト」の委員長を務めるなど、長年にわたり突然死に向き合ってきた循環器専門医の三田村秀雄さん(国家公務員共済組合連合会立川病院病院長)は、こんな話を紹介する。
「日本には、お参りするとポックリ死ねるという、『ポックリ寺』と呼ばれるお寺が存在します。ポックリ寺を巡るツアーも毎年あるのですが、ある人がツアー参加後わずか1カ月で亡くなったところ、それを知った常連のツアー客は翌年誰も参加しなかった…。そんな笑い話があります。この話の真偽のほどは定かではありませんが、ポックリ死にたいと思っても、いざ自分の身に降りかかることを想像すると、怖くなるのが人間の心理ではないでしょうか」(三田村さん)
死に方の理想像は、年齢によっても変わってくる。ある程度の高齢の人なら、子どもや孫に迷惑がかからない死に方として突然死を望む人もいるかもしれない。だが、将来のある若者や、働き盛りの世代の場合、突然死は回避したいという人も多いだろう。大切な家族を残し、仕事も私生活も、やりたいことが山積したまま突然死に襲われるのでは、大きな後悔が残ってしまう。
しかし、一口に突然死といっても、それがどのような原因で起こるのか、われわれが知らないこともたくさんある。一般に突然死とは、「予期せぬ突然の病気で24時間以内に亡くなること」を指すが、そこには、図1のように、さまざまな病気が関係している。この中でも特に多い原因はどれなのか。どんなことに気をつければ突然死のリスクを下げられるのだろうか。まずは突然死にまつわる「基本のキ」から、三田村さんに聞いていこう。
*2 公益財団法人日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団「ホスピス・緩和ケアに関する意識調査2018年」によれば、日本人の77.7%は、理想の死に方として「ある日、心臓病などで突然死ぬ」を選んだ。一方、「(寝込んでもいいので)病気などで徐々に弱って死ぬ」を選んだ人は22.3%にとどまった。