カラダは使わなければダメになる! 「3つの運動習慣」で転倒を防ぐ
第2回 転倒は「生活習慣病の一つ」と捉え、生活習慣の改善に着手しよう
柳本 操=ライター
転倒して骨折し、そのまま寝たきりに――。最近はこの恐怖のコースが知られるようになったが、「それはまだ先の話。自分はまだ大丈夫」と軽く見ている人も多いだろう。しかし、転倒を甘く見てはいけない。「転倒はその後の人生を大きく左右する」という認識を持って、早い段階から生活習慣の改善などに取り組むことが肝要だ。今回は、将来の転倒リスクを下げるために実践したい「運動習慣」を紹介しよう。

「寝たきり」にならないために、注意したい「転倒」。「転倒をきっかけとして骨折し、そのまま寝たきりに…」という恐怖のコースは、テレビ、新聞などで取り上げられる機会も増え、多くの人が認識するようになってきた。
寝たきりなどの介護が必要になった原因の中で「骨折・転倒」は12.5%を占めるまでになっており、転倒・転落による死者も増加の一途をたどっている。驚くべきことに交通事故死の2倍近くに達しているのが現状だ(詳しくは第1回を参照)。
特集の第1回では、「転倒は体の衰えを示す“命の黄色信号”」だという危機意識を持ち、将来の転倒リスクを下げるために生活習慣の改善に取り組む必要があることを解説した。
前回の最後に紹介した「転倒危険度セルフチェック」は試していただいただろうか。3つのチェックポイントのいずれかが当てはまった人は、歩く力(健脚度)が衰えており、転倒リスクが高まっている可能性がある。「まずい!」と思ったなら、今回以降で紹介する「対策編」を読み進めていただきたい。今回も、前回に引き続き、転倒予防のエキスパートである武藤芳照さん(東京健康リハビリテーション総合研究所所長、日本転倒予防学会理事長)に話を聞いていく。
転倒は「生活習慣病の一つ」と捉えるべき
具体的な対策に入る前に、転倒を起こす要因について整理しておこう。
要因は多岐にわたるが、大きく「内的要因」と「外的要因」に分けることができる。内的要因とは、前回のセルフチェックで確認した「健脚度」などの身体機能の低下や、病気などによるもので、外的要因は、建物構造や道路の状態、履いている靴などのことを指す(※外的要因については、第3回で詳しく解説する)。

この内的要因のなかでも主たるもので、かつ自分の心がけによって変えていくことができるのが「身体機能の低下」だ。
「転倒は、よくない生活習慣の“積み重ね”の結果として起こる現象で、生活習慣病の一つと考えていい」と武藤さんは話す。
「運動不足によって体の中にひずみが生まれ、それが蓄積することによって運動機能や感覚機能が衰えていきます。そしてある日、『転倒し、骨折などの大けがをする』という結果を招いてしまうのです。しかし、生活習慣を切り替え、“体を動かす”ことを実践することによって、将来の転倒リスクをより低くすることができます」(武藤さん)
なるほど、「運動」が体にいいことは周知の通りだ。肥満予防、高血糖・高血圧対策などの効果が期待できるのに加え、筋力を保ち、転倒を予防するというなら、実践しない手はないだろう。では、具体的にどんなことを実践すればいいのだろうか。
この記事の概要
