血圧を運動で下げるなら「ややきつい」と感じる強度で
第3回 中野ジェームズ修一が熱血指導! 「散歩感覚」のウォーキングは卒業しよう
松尾直俊=フィットネスライター
運動は健康にいいと頭で分かっていても、時間がない、何をすればいいのか分からないなどの理由から先送りしてしまう人も多い。『医師に「運動しなさい」と言われたら最初に読む本』(日経BP社)を上梓するフィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一さんと、慶應大学医学部スポーツ医学総合センターの医師、田畑尚吾さんに、忙しくても続けられ、高い効果が期待できる運動のやり方を指導してもらおう。今回は高血圧対策について。

「血圧が高いですね。運動していますか?」
健康診断でこんなふうに言われる人は少なくないだろう。年を取るにつれて血管が硬くなり、血圧が高くなる人は増えていく。厚生労働省「国民健康・栄養調査」(2016年)によると、男性は50歳を過ぎると、50%近くが高血圧に該当するという。また、肥満気味の人も血圧が高くなる傾向にある。
血圧は、心臓が血液を押し出す際に動脈の内側にかかる圧力のこと。高血圧と診断されるのは、診察室で測定した「収縮期血圧」つまり上の血圧が140mmHg、または「拡張期血圧」つまり下の血圧が90mmHg以上の場合だ。
血管は、血流の圧力で伸びたり広がったり、また裂けたりしないように収縮する。血圧が高くなると、血管の内壁が傷つきやすくもなるので、だんだんと厚くなって柔軟性を失い、動脈硬化を引き起こす。
そのため、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患、脳梗塞や脳出血、腎臓病など、さまざまな病気を引き起こすリスクが高くなってしまうのだ。
「ややきつい」と感じる有酸素運動で血圧が下がる

厚生労働省が3年ごとに実施している「患者調査」によると、高血圧の人は2014年の時点で1010万8000人と推計されている。これは前回の調査から約104万人増えているという。
「食生活の変化や運動不足による肥満などによって、高血圧になる人は増え続けています。高血圧になると安静にしていなくてはいけないと思っている人も多いかもしれません。しかし、実は運動療法が有効な場合もあるのです」と話すのは、フィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一さんだ。
血圧を下げるためには、「減塩」「肥満解消」「禁煙」そして「運動」が“4本柱”になる。ただ、漠然と「運動しましょう」と言われても、多くの人がどんなことをすればよいのか分からないというのが正直なところだろう。
慶應大学医学部スポーツ医学総合センターの医師、田畑尚吾さんは、「高血圧を改善するためには、ほぼ毎日、『ややきつい』と感じる運動を30分以上行うことが目標だとされています。種目は、ウォーキングや軽いジョギング、水中運動、自転車などの有酸素運動が推奨されています」と説明する。
また、筋トレについても血圧を下げる効果があるという研究報告がいくつもある。「ただし、いきむような、重たいウエイトをあげるトレーニングは、急激な血圧の上昇を招くので避けたほうがいいでしょう。筋トレであれば、自分の体重を使った、いわゆる『自重トレーニング』をうまく取り入れることをお勧めします」(田畑さん)