中野ジェームズ修一直伝! 血糖値を下げる5分間エクササイズ
第1回 糖尿病予備群も必見、忙しくても続けられる運動とは?
松尾直俊=フィットネスライター
健康診断などをきっかけに、医師から「運動しましょう」と言われても、すぐに行動に移せる人はほとんどいない。健康にいいと頭で分かっていても、時間がない、何をすればいいのか分からない、運動すると体に痛みが出る、などの理由から先送りしてしまう人も多い。そこで、『医師に「運動しなさい」と言われたら最初に読む本』(日経BP社)を上梓するフィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一さんと、慶應義塾大学医学部スポーツ医学総合センターの医師、田畑尚吾さんに、忙しくても続けられ、高い効果が期待できる運動のやり方を指導してもらおう。
糖尿病の人は予備群も含めると2000万人

「糖尿病の一歩手前、予備群ですね。運動しましょう」――健康診断などの結果から、医師にこんなふうに言われた経験がある人も少なくないはずだ。2016年の厚生労働省の「国民健康・栄養調査」によると、全国で糖尿病の人は約1000万人、その予備群も約1000万人と推計されている。もはや糖尿病は、国民病と言ってもいいものなのだ。
糖尿病とは、一言でいうと、「血糖値が高くなる病気」のこと。血糖値、つまり血液中のブドウ糖の濃度が上がり、それが原因となって血管にダメージを与え、やがて動脈硬化や神経障害、腎症、網膜症など、さまざまな合併症が引き起こされる。

だが、糖尿病は相当ひどくならないと、自覚症状は出てこない。そのため、運動を勧められても、何もしないで放置してしまう人が後を絶たないのだ。
フィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一さんは、卓球の福原愛選手や、青山学院大学駅伝チームなど、アスリートのフィジカル強化指導を担当している一方で、パーソナルトレーナーとして、中高年向けの生活習慣病対策や、ロコモティブシンドローム対策のための指導も行っている。
「医師に運動しなさいと言われても、何をやったらいいか分からない人は多いですよね。具体的な運動の指導までできる医師は数が少ないのが現実です。どんな運動をしたらいいのか分からない方が、私たちのパーソナルトレーニングを受けにくることがあります」(中野さん)
運動は続ければ続けるほど血糖値が下がりやすくなる
血糖値を下げるために重要なのは、食事療法と運動療法だ。摂取するカロリーと糖質の量を控えれば、血糖値の上昇を抑えることができる。一方で、ブドウ糖は体を動かすためのエネルギー。だから運動すれば、血液中のブドウ糖が筋肉で大量に消費され、血糖値が下がるというわけだ。
慶應義塾大学医学部スポーツ医学総合センターの医師であり、糖尿病患者の運動療法にも詳しい田畑尚吾さんは次のように説明する。
「運動によって一時的に血糖値が下がることを急性効果と言います。その上、定期的な運動を継続して行うと、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの効きがよくなり、血糖値が下がりやすい体質になるのです。これを慢性効果と言います。続ければ続けるほど効果が高まり、積み重ねの効果があるというのが運動療法の特徴です」(田畑さん)