現代人が注意すべきは、カロリーよりも糖質のとり過ぎ
第3回 美味しく楽しく食べて健康に ~正しい糖質制限(ロカボ)の勧め~
伊藤和弘=フリーランスライター
油もお酒もしっかり楽しめる
油のとり過ぎが良くない、という考え方も時代遅れになりつつあると山田さんは話す。
魚の油に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)は動脈硬化を改善して死亡率を下げるとの報告があるし、オリーブオイルは心臓病や脳卒中のリスクを下げると考えられている。これら“体にいい油”だけではない。日本人の場合、“体に悪い”とされる動物性の油(飽和脂肪酸)をたくさんとる人ほど脳卒中が少ないことが確認された(*8)。これらの研究を踏まえ、「はっきり体に悪い油は過酸化脂質とトランス脂肪酸くらい。これ以外の油はどんどんとるべき。少なくとも控えてはいけない」と山田さんは明言する。
実際、米国の食事摂取基準では2015年から油とコレステロールの摂取上限量が外された(*9)。日本の食事摂取基準はそこまで踏み込んでいないが、やはり2015年からコレステロールの制限はなくなっている。
ロカボはアルコールにも寛容だ。
「蒸留酒やワインはほとんど糖質を含まないので、ロカボでは(糖質量という意味では)飲み放題です(笑)。ビールは中瓶1本、日本酒は2合に約16グラムの糖質を含みます。最初に中ジョッキを1杯飲んで、あとは焼酎やハイボールに切り替えればいいのです」(山田さん)
このところロカボが広く知られるようになり、多くの食品メーカーが低糖質の食品を開発している。糖質を40グラム以下に抑えたコースを出している飲食店も増えてきた。どんどんラクにロカボが実践できる社会になってきている。
「ロカボはお腹いっぱい食べられてお酒やスイーツも楽しめる。つらいカロリー制限など必要ありません。美味しく楽しく食べて健康に。それがこれからの食事です」(山田さん)
*9 JAMA. 2015 ;313(24):2421-2

(撮影:稲垣純也/図版:増田真一)
食・楽・健康協会代表理事 北里大学北里研究所病院糖尿病センター長

