名医が勧める「男性ホルモン値を上げる10カ条」とは?
第2回 ホルモンを味方につける男性のためのアンチエイジング入門
伊藤和弘=フリーランスライター
2018年7月21日、東京・六本木で人生100年時代のための最新健康・美容情報体感イベント「スマートリィ・エイジングEXPO」(主催・日経ヘルス、日経グッデイ、日経BP総研)が開催された。そこで発表された講演の中から、順天堂大学大学院医学研究科泌尿器外科学教授の堀江重郎さんによる「ホルモンを味方につける男性のためのアンチエイジング入門」をお届けする。
テストステロンはチャレンジ精神を作る

男性の健康を考えるうえで、特に重要なのがテストステロンというホルモンだ。これは主要な男性ホルモンであり、男性の場合は精巣(睾丸)と副腎、女性の場合は卵巣、脂肪、副腎で作られている。
テストステロンは骨や筋肉を作り、体脂肪を減らして男らしい肉体を作る働きがあるが、それだけではない。最近の研究から、性格や社会性にも大きな影響を与えていることが分かってきた。「常に前へ前へと進んでいく大ヒットTVゲーム『スーパーマリオ』や、集団を作って敵に対抗する黒澤明監督の映画『七人の侍』。彼らの男らしい行動にもテストステロンが関係しています」と堀江さんは指摘する。
狩猟、旅、新しいことに挑戦しようとする“冒険心”。仲間、家族、他人との関係を大切にする“社会性”。ゲーム、スポーツ、仕事に一生懸命になる“競争心”。テストステロンには、これらの気持ちを高める作用があるという。従ってテストステロンが少ない男性は、チャレンジ精神が乏しく、人に勝ちたいという気持ちも弱くなると考えられる。
テストステロン値が高い人は、リスクのある決断をすることを恐れない。「ロンドンの金融街で働く17人の男性トレーダーのテストステロンを調べたところ、テストステロンが多い人は1日の利益が大きく、一方で損失額も大きかったのです(*1)」と堀江さん。つまり、リスクを取って大胆に行動するようになることが確認されたのだ。
難しいことに挑戦し、勝利することでテストステロンの分泌は増える。ボリビアの先住民のテストステロンを調べた研究では、狩猟で見事に獲物を手に入れた男性は失敗した男性よりもテストステロンが高くなっていた(*2)。挑戦し、成功することでテストステロンは分泌が増え、男たちを再び次の冒険に駆り立てるわけだ。
*2 Proc Biol Sci. 2013;281(1776):20132876
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