長生きしたければ3カ月に一度は歯医者へ!
第3回 セルフケアだけでは、歯周病に太刀打ちできない
田中美香=医療ジャーナリスト
歯周ケアを怠ると、口の中の細菌が全身に回って菌血症を起こし、脳卒中や心筋梗塞、糖尿病などの重大な病気を引き寄せる。しかし、それを回避するために歯磨きだけを徹底しても、十分な効果は得られない。そこでぜひ定期的に受けたいのが、歯科のプロフェッショナルによるケアだ。素人の歯磨きより圧倒的にクオリティが高いスゴ技と、マウスピースで口の中の悪玉菌を排除する最新の予防法について、鶴見大学歯学部探索歯学講座教授の花田信弘さんに教えていただこう。
「これって歯周病かも?」と疑うポイントは7つ
第1回、第2回では、歯周病菌による感染症、「歯周病」を放置すると、重大な病気の発症リスクが高まることを解説した。口の中の歯周病菌が傷んだ歯肉から血管内に侵入すれば、「菌血症」を起こし、さまざまな病気を招いてしまう。口内細菌に詳しい鶴見大学歯学部探索歯学講座教授の花田信弘さんは、「菌血症で寿命を縮めたくなかったら、早く歯周病の存在に気づいて手を打つべき」と強調する。
しかし、歯周病は痛みがないまま進行していくため、初期の段階で自覚しにくいのが難点だ。早く歯周病に気づくためには、まずは図1のチェックリストを試してみてほしい。1つでも該当すれば歯周病の可能性が高いといっていいだろう。ただし、成人の8割が歯周病にかかっているというから、「もしかして歯周病」どころか、「たぶん歯周病」と最初から疑ってかかった方がよさそうだ。
図1 チェックリストのうち1つでも該当すれば歯周病を疑おう
口に手を当てて息を吐いたとき、口臭がある
歯肉ラインが、U字形ではなくV字形になっている

口の中がネバネバする(特に起床時)
歯を磨くと、歯茎から出血する
歯と歯の間に食べカスがはさまる
歯茎が下がって歯が長く見える
歯がグラグラする
チェックリストの中で、花田さんが注目するのは「口臭」だ。
「歯周病菌は、揮発性の硫化物を発生させます。卵が腐ったような異臭は歯周病のサインなので、まずは口臭がきつくないか注意してください。でも、自分で口臭に気づくのは難しく、親しい人も『息が臭いですよ』とは指摘しづらいものです。気づくポイントは、自分の手で口元を覆ってハーッと息を吐き、嗅いでみること。それで臭いが気になれば、歯周病菌が増殖しているといっていいでしょう。歯磨き直後は歯磨き剤の効果で口臭が気になりにくいので、例えば、昼食と夕食の間、15~16時の口臭チェックをお勧めします」(花田さん)
口臭に加えて、見た目の変化にも注意が必要だ。図1の通り、健康な歯肉はU字形だが、歯肉が炎症を起こして腫れると、このラインがV字形になり始める。歯肉ラインがV字形になっていないか、歯磨きのついでに鏡で見る習慣をつけるといいだろう。
では、「自分も歯周病なんだ!」と自覚できたとして、今から自力で頑張って歯磨きをすれば引き締まった歯茎を取り戻せるかというと、「それは難しいですね」と花田さんは首を振る。