歯周病を放置すると認知症や肺炎、がんのリスクも高まる!?
第2回 歯周病菌が血管に入れば、全身に回って悪事を働く
田中美香=医療ジャーナリスト
口の中に存在する悪玉菌は、血流に乗って全身にばらまかれ、全身の病気に関与していく。このことは、第1回で取り上げた糖尿病だけでなく、認知症や肺炎、膵がんも例外ではない。無防備な状態で外界にさらされている口の中の手入れを怠ると、その先にどのような怖いことが待っているのか、鶴見大学歯学部探索歯学講座教授の花田信弘さんに聞いていく。
第1回では、糖尿病の発症リスクなどに関与する歯周病の恐ろしさについて解説した。糖尿病は、全国に約1000万人もの患者が患う、決して人ごとではない病気。そして、避けて通りたい病気でもある。
だが、歯周病の脅威はこれだけではない。日本に約400万人もいる認知症にも関係する可能性が指摘されている。認知症と歯周病がどうつながっているのか、口内細菌のエキスパート、鶴見大学歯学部探索歯学講座教授の花田信弘さんに聞いていこう。
口の中の悪玉菌が原因で認知症に!?
認知症にはいくつかのタイプがあり、最も多いのがアルツハイマー型認知症、それに続くのが脳血管性認知症とされている。「この両方の認知症に、口の中の悪玉菌が関わっている可能性があります」と花田さんは語る。一見すると無縁に思える認知症と歯周病は、どのように関係しているのだろうか。
「認知症に関連する悪玉菌は2つあるといわれています。1つ目は、脳血管性認知症に関連する虫歯菌です。虫歯菌として知られるミュータンス菌が歯肉から血管に侵入して脳血管にたどり着くと、そこで小さな脳出血が発生します(*1)。すると、神経細胞が壊死して認知症を引き起こすのです。脳は血管の集合体のようなものなので、口内細菌が血管に入れば、脳にも影響しないわけがありません」(花田さん)
認知症に関連する2つ目の口内細菌は、歯周病菌のジンジバリスだ。ジンジバリスは成人の約6割が感染するといわれる細菌で、アルツハイマー型認知症に関連することが明らかになっている。
ジンジバリスは、歯周病菌の中でも悪性度の高い菌の1つ(図1)。毒素を出して歯を支える歯槽骨を破壊し、感染率も非常に高いのが特徴だ。