日本人最大のがんのリスク要因とは?
第3回 やはり「たばこ」と「酒」は要注意! 運動や体型維持も欠かさずに
二村高史=フリーライター
「避けることのできない恐い病気」というイメージがつきまとう「がん」。実は生活習慣次第で発症のリスクを低下させることは可能だ。では、どのような生活を心がければいいのだろうか。国立がん研究センターが推奨する対策は5つある。前回は、その中から「食生活の改善」について解説した。最終回となる今回は、「禁煙」「節酒」「身体活動(運動)」「体型の維持」について詳しく紹介しよう。
第1回で詳しく紹介したように、“がんになりにくい体”をつくるためには、普段の生活習慣が大切だ。がんは遺伝による影響が大きいと思う人も少なくないが、実は、生活習慣の影響がはるかに大きい。

数ある生活習慣の中で、国立がん研究センターがまず取り組むべきと推奨しているのが、「禁煙」「節酒」「食生活」「身体活動」「体型の維持」の5つの対策である。これらの対策は、実施した個数が多ければ多いほど、がんの罹患リスクが下がることが確認されている(詳しくは 第2回を参照)。
本特集では、がん予防のプロフェッショナルで、著書も多く手がける国立がん研究センター 社会と健康研究センター センター長の津金昌一郎さんに、生活習慣の改善の大切さや、食生活で注意すべき点を紹介してきた。最終回となる今回は、「禁煙」「節酒」「身体活動」「体型の維持」について詳しく聞いていこう。また、胃がんなどのリスク要因になっている「感染」についても解説する。
すべてのがんの最大のリスク要因はやっぱり「喫煙」
がんのリスク要因はさまざまだが、最大のリスク要因は「たばこ」だ。たばこには、ニトロソアミン、ヒ素、カドミウムなど、約70種類の発がん性物質が含まれており、さまざまながんの原因になる。
津金さんは、「がんを予防する上で、最も効果的な方法は『たばこを吸わないこと』」と断言する。さらに、「たばこはがんだけでなく、循環器系、脳血管系、呼吸器系疾患や糖尿病などのリスクを高めます。まさに『喫煙は百害あって一利なし』なのです」と話す。
読者の多くはすでに、たばこの害については“耳にタコ”ができるほど聞いていると思うが、ここで再度、認識を新たにしていただきたい。多数の日本人を対象に追跡調査をした疫学研究によっても、それは証明されている。
3つの大規模コホート研究を併せた、40~79歳の日本人男女約30万人を対象に平均9.6年間追跡調査した研究によれば、たばこを吸う人は吸わない人に比べて、肺がんによる死亡リスクは約4~5倍も高まることが分かっている(J Epidemiol. 2008;18:251-64.)。
たばこというと肺がんばかりを連想しがちだが、それだけではない。下のグラフにあるように、喫煙はさまざまながんによる死亡リスクを増大させる。食道がん(男性)は3倍以上、喉頭がん(男性)や尿路がん(男性)は5倍以上と軒並み高い。
国立がん研究センターによるリスク評価(詳しくは第2回を参照)でも、肺がんはもちろん、食道がん、胃がん、すい臓がん、子宮頸がん、肝臓がん、頭頸部がん(咽頭がん、喉頭がんなど)、膀胱がんのリスクが「確実」に増加すると評価されており、大腸がんと乳がんについても高くなる「可能性あり」となっている。他の要因に比べても段違いに「確実」が多いことがひと目で分かる。