科学的根拠に基づく 「がんのリスクを下げる食事」の全貌
第2回 赤肉、こげは大丈夫? 今すぐ実践すべき「食生活」の3大対策
二村高史=フリーライター
誰もがかかりたくないと願う「がん」。がんは遺伝による影響が大きいと思う人も少なくないが、実は、生活習慣の影響の方がはるかに大きい。では、どのような生活習慣を心がければ、がんのリスクを下げられるのだろうか。がん予防のエキスパート・津金昌一郎さんによると、まず取り組むべき対策は5つあるという。今回はその中から、多くの人の関心が高い「食生活」を中心に話を聞いていこう。

今や、誰もがなる可能性があるがん――。前回は、がんになるかならないかは、生活習慣が大きく影響していることを解説した。「がんは遺伝による影響が大きい」と思う人も少なくないが、実は、生活習慣などの後天的な要因の影響の方がはるかに大きいのである。
日本におけるがん研究の総本山ともいえる国立がん研究センターの試算によると、日本人の男性のがんの約半分、女性のがんの約3割は予防可能だったという結果が出ている(詳しくは第1回を参照)。特に、男性の場合は、約5割ものがんを防ぐことができるとは驚きだ。
では、具体的にどのような生活習慣によって、どのようながん予防の可能性があるのだろうか。
その参考になるのが、国立がん研究センターの研究グループがまとめた「日本人のためのがん予防法」である。これは、日本人を対象として、数多くの人を長年にわたって追跡調査した疫学研究の結果を基に作成したものだ。それぞれの生活習慣がどういうがんの予防に、どの程度の影響を及ぼしているのかを評価している。
ここで大切なのは、「日本人のための」という点である。人種や民族によって遺伝的な違いもあれば、生活環境、社会環境も異なる。そのために、例えば欧米人のデータが日本人に当てはまるとは限らない。だからこそ、日本人を対象にした科学的根拠(エビデンス)に基づく「日本人のためのがん予防法」が重要になってくる。
やればやるほど効果あり、生活習慣の改善
がん予防のプロフェッショナルで、がん予防の著書も多く手がける、国立がん研究センター 社会と健康研究センター センター長の津金昌一郎さんは、「国内外の研究から、現状において『がんになりやすい生活習慣(環境)』と分かっているものがあります。これらのうち、『喫煙』『飲酒』『偏った食生活』『運動(身体活動)不足』『体型(太り過ぎ/やせ過ぎ)』という5つの要因は、がんのリスクを高めるという日本人のエビデンスも蓄積しています。まず着手していただきたいのはこれらを防ぐ生活習慣の実践です(下図を参照)。着実な実践により、がんにかかるリスクの低減が期待できます」と話す(*1)。

国立がん研究センターでは、これら5つの習慣のうち、何個実践するかによって、どれだけリスクが下がるかを調べている。それによると、実践する習慣の数が増えるほどリスク(将来がんになる確率)が下がり、5つ実践した場合は、男性で43%、女性で37%もリスクが下がるという結果になっている(Prev Med. 2012;54(2):112-6.)。
これらの生活習慣は、より多くやればやるほど効果があるというわけだ。
「がんに罹患する確率は年齢とともに上がりますが、これら5つの健康習慣がない人が罹患する確率は、5つとも実践した人と比べて10歳程度高齢の人と同程度であることが分かっています」と津金さんは話す。10年とは大きな違いだ。これは、実践してみない手はない。