大腸カメラよりもキツイ、検査前の大量の下剤
大腸がん(第2回)
近藤慎太郎=医師兼マンガ家
日経Gooday読者なら誰もが気になる「がん」。『医者がマンガで教える 日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』の著者であり、マンガも描ける医師である近藤慎太郎さんに、がんとがん検診の新しい常識について解説していただきましょう。
便潜血検査は大腸がんなどの病変から出た血が便に混ざっていないかを調べる検査です。少し話はそれますが、便潜血検査で胃がんのチェックはできないのでしょうか。胃がんで出血する場合も陽性になってもいいように思います。
ただ結論から言うと、胃がんのチェックは残念ながら便潜血検査ではできません。血液(この場合、ヒトヘモグロビン)は、胃などの消化管の上流で出た場合、胃酸や膵液などに長時間さらされて、便に混じるまでに「変性」してしまいます。このため便潜血検査では引っ掛かりにくいのです。
一方で、大腸など消化管の下流で出血した場合には、ごく一部が変性するかもしれませんが、大部分はヒトヘモグロビンの形態を留めているため、検出可能なのです。
「何だ、一緒に検査できればいいのに……」と思った人もいるかもしれません。しかし、大腸のチェックしかできないことは、必ずしも悪いことではありません。
例えば、もし検査が陽性になった場合、「胃か大腸か分からないから、両方をカメラで検査しましょう」と言われるのは辛いでしょう。「胃は半年前にチェックしたのに」という場合でも、「仕方ないから念のためにもう一度受けようか」と思うかもしれません。それよりは「便潜血検査=大腸」という一対一の関係の方が、結局のところは便利なのです。
大腸カメラよりもキツイ、検査前の大量の下剤
本論に戻りましょう。繰り返しますが、便潜血検査でポリープを見つける可能性は11~18%と決して満足できるものではありません。
では、どのようにポリープを見つければいいでしょうか。
様々な方法がありますが、正確性や医療機関への普及度を考えると、「大腸内視鏡検査(以下、大腸カメラ)」に軍配が上がります。実際、便潜血検査が陽性になった場合、ほとんどの医療機関は精密検査として大腸カメラを行っています。
大腸カメラは、胃カメラとよく似たカメラを肛門から入れて大腸を観察する検査です。胃カメラと同様、粘膜面を直接観察できる優れた検査方法です。異常があれば、そのまま組織を採取して病理診断も行えます。
ただし、カメラをそのまま入れてしまうと大腸に便が残っていて観察ができません。
そのため、検査の前には最低1~2リットルの液体の下剤を飲んで、便をザーッと洗い流して大腸を完全にカラにする必要があります。
これが結構大変です。本番の検査よりもこちらの方がキツイという人もいるほどです。