肺がんだけじゃない? タバコの本当の怖さを知っているか
肺がん(第1回)
近藤慎太郎=医師兼マンガ家
日経Gooday読者なら誰もが気になる「がん」。『医者がマンガで教える 日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』の著者であり、マンガも描ける医師である近藤慎太郎さんに、がんとがん検診の新しい常識について解説していただきましょう。
タバコの怖さは肺がんだけじゃなかった
2017年から、受動喫煙防止法の成立を巡って厚生労働省と自民党、さらには小池百合子都知事、関連団体なども加わって、侃々諤々(かんかんがくがく)の議論が続いています。これをきっかけに、世の中で喫煙についての議論が深まることはとても大事なことです。
タバコを吸うと、がんや心臓病、脳卒中、肺気腫、喘息などの罹患率や死亡率が高くなることが知られています。世の中に体に悪いものは数多くありますが、そのインパクトの強さでは、何といってもタバコが群を抜いています。
下のグラフは、日本人の死亡に関わるリスク因子を並べたものです。タバコは、がんにも心臓にも肺にも幅広く悪影響を及ぼすので、高血圧を抑えて、堂々の1位です(*1)。年間13万人が、たばこの原因による病気で亡くなっています。
このうち約8万人ががんですが、ここには肺がん以外のがんも含まれています。
「えっ、タバコは肺がんのリスク因子じゃないの?」と思った人も多いでしょう。
確かに、タバコは肺がんとの関係ばかりがクローズアップされ、肺がんだけに悪影響を与えるイメージが蔓延(まんえん)しています。けれど、IARC(国際がん研究機関)や国立がん研究センターによれば、タバコは、肺がんのほかにも、鼻腔・副鼻腔のがん、口腔がん、咽頭がん、喉頭がん、食道がん、胃がん、大腸がん、膵がん、肝臓がん、腎がん、膀胱など尿路系のがん、子宮頸がん、卵巣がん、骨髄性白血病と、計15種類のがんのリスク因子なのです。
さらに、それぞれのがんのリスク因子がある人(胃がんのピロリ菌や肝臓がんのC型肝炎ウイルスなど)は、タバコを吸うことが相乗作用となって、がんのリスクを押し上げます。
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