日本経済新聞 関連サイト

ようこそ ゲスト様

日経 Gooday

ホーム  > からだケア  > 医者がマンガで教えるがん検診の受け方、使い方  > 「年のせい」の不調はテストステロン不足にあった  > 3ページ
印刷

医者がマンガで教えるがん検診の受け方、使い方

「年のせい」の不調はテストステロン不足にあった

前立腺がん(第5回)

 近藤慎太郎=医師兼マンガ家

 テストステロンの減少による、いわば男性版の更年期障害は、LOH症候群(lateonset hypogonadism syndrome)と呼ばれています。その症状には前述したものも含めて、次のようなものがあります。

  • 性欲低下、ED
  • 知的活動、認知力の低下
  • うつ
  • 睡眠障害
  • 筋肉の減少
  • 内臓脂肪の増加
  • 体毛と皮膚の変化
  • 骨密度の低下、骨粗鬆症、骨折のリスク増加
  • 虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)

 ここで大事な注意点があります。肥満やうつは、テストステロン減少の原因にもなるし、結果にもなっています。つまり肥満になれば、テストステロンが減少してさらに肥満を悪化させ、うつになれば、テストステロンが減少してさらにうつを悪化させるという、「負のスパイラル」が起こるのです。

 それとは反対に、適切な運動によって全身の筋肉量が増えれば、テストステロンの産生量が増え、筋肉の維持、脂肪の減少といった「正のスパイラル」になっていきます。

 LOH症候群の患者にテストステロンを投与すると、先ほど挙げたような症状が全般的に改善される可能性があります。特にEDやうつ、認知機能については効果があるという報告が多数あります。

 ただし、テストステロンもむやみに投与すればいいというわけではありません。テストステロンは前立腺がんや前立腺肥大、睡眠時無呼吸を悪化させる可能性があるので、それらの病気がある人には投与はできません。また65歳以上の場合、投与によってむしろ虚血性心疾患のリスクを上げてしまったという報告があります。

テストステロン投与で虚血性心疾患のリスクが上がる?

 テストステロンには血管を拡張したり、動脈硬化を抑制したりする作用があります。またテストステロンの減少によって虚血性心疾患のリスクが上がります。それを考慮すると、この報告の結果は、一見矛盾するようです。

 それについては、次のように説明できます。テストステロンは赤血球の数を増やす作用もあります。これによって全身に運搬される酸素量が増えるので、運動能力が上昇するというメリットがあります(スポーツ選手の高地トレーニングと同様の効果です)。

 その反面、血液が濃くなるので、細い血管が詰まりやすくなってしまうのです。40~50代で動脈硬化が進んでいなければ、テストステロンによって赤血球の数が多少増えても問題にはなりません。

 けれど報告にある通り、65歳以上などの人で、加齢によって動脈硬化が進んでいれば、テストステロンの良い作用が出る前に、増えた赤血球で血管が詰まってしまう可能性も出てくるのでしょう。もしあなたがLOH症候群でテストステロンの投与を検討しているのであれば、事前に心臓の評価をきちんと行っておくことが重要です。

 また現段階では、テストステロンの減少によって起きる症状が、テストステロンを補充することで、どこまで改善するかは未知数です。保険適用でもないので、継続的な出費が必要になるという点もマイナス点です。

 テストステロンの研究は端緒についたばかり。人為的にテストステロンを補充するのは最終手段として、まずは運動などのアクティブな活動を通じて、生理的な範囲内でのテストステロン値をキープしていくことが安全でしょう。

 それでも、今まで漠然と「歳のせい」と片づけられていたいくつもの症状が、テストステロンという一つの切り口によって、定量的に解明されつつあるのは非常に好ましいことです。

 それによって寝たきりや認知症のリスクが減れば、健康寿命の増進に寄与します。介護人口の増加が危惧される日本においては、一つの光明にもなり得るでしょう。今後の知見の集積に期待したいと思います。

『医者がマンガで教える 日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』

この記事は、日経BP社の『医者がマンガで教える 日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』(近藤慎太郎著、312ページ、税込1512円)からの転載です。

■参考文献
『ED診療ガイドライン』
Men’s’ Health2016
加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)診療の手引き
Basaria S1, et al. Adverse events associated with testosterone administration. N Engl J Med. 2010;363:109-22.
近藤慎太郎(こんどう しんたろう)さん
医師兼マンガ家 日赤医療センター、亀田総合病院、クリントエグゼクリニックなどで勤務
近藤慎太郎(こんどう しんたろう)さん 北海道大学医学部、東京大学医学部医学系大学院卒業。日赤医療センター、東京大学医学部付属病院を経て、山王メディカルセンター内視鏡室長、クリントエグゼクリニック院長などを歴任。消化器の専門医として、これまで数多くのがん患者を診療。年間2000件以上の内視鏡検査・治療を手がける。特技はマンガで、解説マンガも著者が自ら描いている。

先頭へ

前へ

3/3 page

RELATED ARTICLES関連する記事

からだケアカテゴリの記事

カテゴリ記事をもっと見る

FEATURES of THEMEテーマ別特集

  • 青魚のDHAやEPAで、血管を若返らせて、メタボも抑制!

    サバ、イワシなどの「青魚」の健康効果が注目されている。青魚にたっぷり含まれるDHAやEPAは、血管を若返らせ、メタボを抑制したり、認知症のリスクを下げる効果も期待できる。手軽に食べられる「サバ缶」や「イワシ缶」も人気で、カルシウムもしっかりとれるため、骨粗鬆症の予防にもなる。

  • 老化を左右する血管! 若返りのポイントは?

    体の中に縦横無尽に張り巡らされた「血管」をよい状態に保つことは、健康を維持するため、そして老化を防ぐために極めて重要だ。では、強い血管をキープし、老化した血管を若返らせるには、何をすればいいのだろうか。本特集では、2万例を超える心臓・血管手術を手がけてきたスペシャリストに、血管の若さを維持する秘訣と、血管を強くする運動法・食事法を聞いていく。

  • つらい「肩こり」は動的ストレッチで解消!

    肩こりの原因の大半は、生活習慣。すなわち、不自然な姿勢で過ごすことや、たとえ良い姿勢であっても長時間続けてしまうことが、首や背中の筋肉を緊張させ、筋疲労を引き起こす。この記事では、肩こりに関する記事の中から重要ポイントをピックアップして、肩こりの解消方法をコンパクトに紹介していく。

テーマ別特集をもっと見る

スポーツ・エクササイズSPORTS

記事一覧をもっと見る

ダイエット・食生活DIETARY HABITS

記事一覧をもっと見る

からだケアBODY CARE

記事一覧をもっと見る

医療・予防MEDICAL CARE

記事一覧をもっと見る

「日経Goodayマイドクター会員(有料)」に会員登録すると...

  • 1オリジナルの鍵つき記事鍵つき記事がすべて読める!
  • 2医療専門家に電話相談できる!(24時間365日)
  • 3信頼できる名医の受診をサポート!※連続して180日以上ご利用の方限定

お知らせINFORMATION

SNS

日経グッデイをフォローして、
最新情報をチェック!

RSS

人気記事ランキングRANKING

  • 現在
  • 週間
  • 月間

NIKKEICopyright © 2019 Nikkei Inc. All rights reserved.