前立腺肥大、薬の選び方次第では射精障害に?
前立腺がん(第3回)
近藤慎太郎=医師兼マンガ家
日経Goodayの男性読者なら誰もが気になる「前立腺がん」。『医者がマンガで教える 日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』の著者であり、マンガも描ける医師である近藤慎太郎さんに解説していただきました。
(前回から読む)
ここまで、男性のがんの中でも、患者数が非常に多い前立腺がんについて解説してきました。
この前立腺がんに負けず劣らずの身近な病気なのが、前立腺肥大です。
男性のうち、40歳代が2%、50歳代が2%、60歳代が6%、70歳代が12%、前立腺肥大を患っていると推測されています。年齢を重ねると徐々に患者数が増えることから分かるように、前立腺肥大は年齢とともにリスクが増大する病気です。
前立腺は、尿道をグルリと取り囲んでいます。そのため前立腺が肥大すると、尿道が圧迫されて尿の出が悪くなってしまいます。
「最近、尿のキレがいまいち」「就寝中にトイレに行きたくて起きてしまう」――。こんな症状がある場合は、前立腺肥大の可能性があります。
前立腺肥大は原則的に命に関わる病気ではありません。病状が進行して尿がほとんど出なくなってしまえば、重い尿路感染症や腎不全を引き起こす可能性もあります。
けれど通常は、そこまで放置することはないはずです(ただし高齢で、意思の疎通が困難な人は尿量に留意が必要です)。
また「前立腺肥大」と「前立腺がん」は、いかにも関係があるように思えますが、原則的には別の疾患で、前立腺肥大が前立腺がんのリスクを上げるわけでもありません。むしろエビデンスはないものの、前立腺肥大がある人には、前立腺がんが少ないという印象を持っている泌尿器科医が多いようです。
ただし症状が似ているので、どうせ前立腺肥大だろうと思っていたら前立腺がんだったというケースは十分にあり得ます。排尿に不安がある場合は、安易に自分で判断せずに、医療機関を受診することが大切です。
純粋な前立腺肥大で死亡することはまずありませんが、排尿障害があったり、そのために睡眠が十分に取れなかったりすれば、QOLが著しく低下してしまいます。頻度が高く、自分が罹患する可能性も高い病気なので、やはりうまく遠ざける工夫が必要です。
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