匂いを感じない…それは認知症の初期症状かも
第1回 嗅覚低下は「食事がおいしくない」から始まる
田中美香=医療ジャーナリスト
夏になると、気になるのが「匂い」の問題。満員電車での他人の匂いはもちろん、最近では“加齢臭”に代表される自分の匂いを気にする人が増えている。だが、とかく厄介者扱いされがちな匂いにも、重要な効果、役割がある。「匂いはどう体で感知されるのか」「匂いを感じなくなったらどうなるのか」――。そんな素朴な疑問を、匂いのプロフェッショナルに解説していただこう。
他人も自分もクサイ…そんな気になる「匂い」にも重要な効果が

夏につきものの悩みといえば、猛暑による大量の汗、そして「匂い」だ。夏は頻繁に汗をかくうえ、薄着になることもあって、他の人の体臭が気になるシーンが増える。通勤電車やエレベーターなどで他人と密に接するときなど、“におう”人の近くにあたってしまうとつらい。職場でも、同僚の汗臭さが気になって仕方ないという人も少なくないだろう。
自分の匂いを気にする人も増えている。ここ10年ほどで、中高年以上の「加齢臭」の認知が広まり、加齢臭は嫌な匂いの代表例となった。自分の加齢臭で周りに迷惑をかけているのでは…と気にする人も多いはず。また、昔からの定番だが、自分の足の匂いが心配で、靴を脱いで座敷に上がりたくないという人もいる。
このように、昨今、厄介者扱いされがちな匂いだが、実は匂いには重要な効果、役割もある。その一例として、高齢者が匂いを感じなくなってきたら、それは認知症の初期症状の可能性があるという。さらに、嗅覚の有無が死亡率とも関係するという研究報告があるというのだから、これは聞き捨てならない。
そこで、今回の記事では、人間が匂いを感じるメカニズムから、匂いや認知症の関係などを、匂いのプロフェッショナル・東京大学大学院農学生命科学研究科教授の東原和成(とうはら かずしげ)さんに聞いていこう。
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