人生をドブに捨てたくなければ、血圧は自宅で測るのが鉄則
第1回 毎日測るだけ、「血圧レコーディング」の驚きの効果
田中美香=医療ジャーナリスト
高血圧の人は国内に4300万人もいるといわれ、50代以上の男性では5割近くが該当する。自覚症状がないからと放置すると、血管の老化は確実に進み、突然死の原因になりかねない。高血圧から脱却するには、生活習慣を見直す必要があるのは周知の通りだが、自覚症状がないため、なかなか「続かない」。そこで本特集では、確実に血圧を下げるコツを、“ミスター血圧”こと、前東京女子医科大学東医療センター内科教授・愛知医科大学客員教授の渡辺尚彦さんに聞いていこう。
現在、国内で高血圧と推定される人は4300万人にのぼる。これは全人口の3分の1に相当する数字だ。
中でも、高血圧に特に注意すべきは中高年の男性である。血圧は年齢とともに上昇する傾向があり、男性の場合、50歳を過ぎると5割近くが高血圧に該当する(グラフ参照)。実際、読者の中にも、自分が高血圧と診断されていたり、家族や身近な人が高血圧だったりする人は多いのではないだろうか。
日経Goodayではこれまで、高血圧のリスクについてたびたび紹介してきた。テレビや雑誌などのメディアでも、高血圧は頻繁に取り上げられるから、多くの読者は「血圧は下げるべき」だと頭では分かっているだろう。高血圧は血管の老化を進める原因の1つで、「健康寿命を縮めたくなければ、高血圧は回避すべき」というのは、もはや中高年にとって常識でもある。
しかし、多くの場合、高血圧には自覚症状がない。本人が気づかないうちに“静かに”進行し、ある日突然、心筋梗塞や脳卒中などを起こし、最悪の場合は死に至る。このため、高血圧は静かなる殺人者「サイレントキラー」といわれるのだ。
「血圧を下げるべき」と分かっていても、自覚症状がないから多くの人は放置してしまう。痛くもかゆくもなければ、食事制限や運動はなかなか続かないものだ。減塩や運動などの対策に取り組んで、三日坊主で終わった人も多いだろう。
血圧は何とか下げたい、だが続かない――。では、どうすればいいのだろうか。
そこで今回の特集では、「ミスター血圧」の異名を持つ前東京女子医科大学東医療センター内科教授・愛知医科大学客員教授の渡辺尚彦さんに、血圧を下げる実践的な対策を聞いていく。渡辺さんは高血圧を中心とした循環器病が専門で、365日24時間、自らの血圧測定を実践してきた。1987年に測定を開始したというから、その期間は30年以上になる!そんな渡辺さんに、確実に血圧を下げるコツを聞いていこう。