健康長寿の秘訣はウォーキングとイチローストレッチ
第3回 運動のやり過ぎに注意! ウォーキングは1日10分×3回でOK
伊藤和弘=フリーランスライター
いつまでも健康に過ごすためには何が必要だろうか。食事や運動などの生活習慣に気を配ることが、病気を防ぎ、若々しさをキープする秘訣だ。だが、間違った生活習慣を身につけてしまうと、逆に老化が進み、病気のリスクが高まる。アンチエイジング医療の専門家である満尾クリニック院長の満尾正さんに、健康長寿を意識した運動のやり方について解説していただこう。ポイントは「運動のやり過ぎ」に注意すること、そして股関節などを柔らかく保つことだ。

老化を少しでも遅らせ、いつまでも健康で若々しい心身を保つには、「老化ホルモン」の分泌を抑えるとともに「若返りホルモン」の分泌を増やすことが大切だ。そこで前回の「食事」に続き、今回は「運動」によって若返りホルモンを増やし、健康を保つコツをお伝えしよう。
ポイントは「運動のやり過ぎ」に注意すること、そして硬くなりがちな股関節などを柔らかくしておくことだ。
過度な運動はストレスになり、老化ホルモンである「コルチゾール」の分泌が促進されてしまい、逆効果になる。とはいえ、運動の負荷が低すぎても、効果が薄くなってしまう。また、加齢により硬くなりがちな股関節などをそのままにしておくと、ケガの原因になり、見た目にも姿勢が悪くなる。
どれぐらいの運動が適切なのか。そして体の柔軟性をどう保てばいいのか。アンチエイジング医療の専門家である満尾クリニック(東京都渋谷区)院長の満尾正さんに解説していただこう。
運動は「若返りホルモン」を増やし、寿命を延ばす
そもそも、運動はなぜ体にいいのだろうか。運動すると体脂肪が減り、筋肉が増え、血管機能が改善して動脈硬化が抑えられ、病気の予防にもなる。実際に多くのエビデンス(科学的根拠)も報告されている。
まず、運動習慣のある人は死亡率が低く、寿命が延びる。17カ国13万人を平均6.9年追跡した研究では、1日30分または週150分の運動をしている人たちはしていない人たちに比べて死亡リスクが28%、心臓病のリスクが20%低かった(*1)。
運動不足も原因とされる糖尿病や高血圧といった生活習慣病の発症リスクが下がるのは当然としても、運動でがんの発症リスクまで下がることをご存じだろうか?
約144万人を11年間追跡した研究によると、週5日以上ウォーキングなどの運動を行う人はがんの発症リスクが7%低下する。明らかな効果が確認されたのは肺がん、肝臓がん、腎臓がん、大腸がんなど13種類。食道がんは42%も低下する(*2)。
運動には脳内のネットワークを強化し、脳を活性化する作用もある。実際、運動習慣のある人は認知症の発症率が低かった(*3)。筋肉に刺激を与えることで、若返りホルモンの一つであり、男性のアンチエイジングに欠かせないテストステロンを増やす作用も確認されている(*4)。
*2 JAMA Intern Med. 2016;176(6):816-25
*3 JAMA. 2004;291(24):2947-58
*4 Metabolism. 1996;45(8):935-9