「膝」に負担をかけずに自分の脚で歩き続けるコツとは?
第3回 一生使える膝を手に入れる生活習慣
塚越小枝子=フリーライター
「膝(ひざ)は消耗品なので、痛みが出たら自力で治すことはできない」とあきらめるのはまだ早い。前回は、お茶の水整形外科機能リハビリテーションクリニック院長の銅冶英雄さんが提唱する、膝の痛みを自力で軽減する「痛みナビ体操」を紹介した。今回は、一生自分の脚で歩ける膝を保つために心がけたい、日常生活や運動の注意点を紹介しよう。
膝の痛みを「痛みナビ体操」(第2回参照)で軽減できたとしても、日常生活での膝の使い方が悪ければ、また痛くなる。膝痛の再発や悪化を防ぐには、体操と並行して、膝に負担をかけない動作や工夫を身につけることが大切だ。そこで最終回となる今回は、膝を一生長持ちさせるための「運動」「歩き方」「靴選び」についてポイントをまとめた。
膝の痛みを取るために筋トレをしても逆効果!?
「膝の痛みを軽減するためには、膝回りの筋肉を鍛えて膝の負担を減らせばいいのではないか」と考えている人も多いのではないだろうか。だが、お茶の水整形外科機能リハビリテーションクリニック院長の銅冶英雄さんに聞くと、「痛みと筋力トレーニングは直接の関係がないので、区別して考えて。いくら筋肉を鍛えても膝の痛みは良くなりません」という意外な答えが返ってきた。
「構造から考えて、基本的に膝は垂直方向にかかる衝撃を吸収する役割をしています。周りの筋肉は膝の関節を支えてはいますが、垂直方向の力を吸収するクッション作用はありません。ですから、脚の筋肉を鍛えたからといって軟骨の負担は減らないのです」(銅冶さん)

膝まわりの筋肉を鍛える筋力トレーニングとして、椅子や台に座って片方の膝を曲げ伸ばしする「大腿四頭筋訓練」(イラスト)が勧められることも多い。だが、銅冶さんによれば、この運動は筋トレと同時に膝関節の伸展運動も兼ねており、この運動を行って膝の痛みが軽減したとしても、大腿四頭筋に筋力をつけたことと膝の伸展運動をしたことのどちらが効果をもたらしたのかを判断するのは難しいという。
また、膝まわりの筋力を強化しようと無理をしてスクワットやウエイトトレーニングなどをしても、かえって膝に負担がかかり逆効果になってしまう恐れもある。筋力をつけるのはあくまでも足腰を鍛え、老化を防止するという別の目的ため。痛みの出ない範囲で行うようにしよう。
![]() | 脚の筋力を鍛えても膝の軟骨への負担は減らせない。痛みの軽減と筋トレは区別して考えよう。 |
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