認知症リスクが半減!驚きの最新食事法の効果
第1回 認知症予防には食生活改善が大きく影響! 5年、10年で大きな差に
伊藤和弘=フリーランスライター
誰しも認知症にはなりたくないもの。だが、私たちにできることは何かあるのだろうか。一般に知的活動や運動などがよく知られているが、忘れてはならないのが食生活だ。食生活と認知症リスクとは密接な関係にあり、今、世界的にも注目されている。米国で2015年に発表された最新食事法をきちんと実践した人は発症リスクが最大53%低かった、という研究報告も出ている。本特集では、認知症と循環器病のエキスパート・猪原匡史さんに、認知症を遠ざける食生活のポイントを聞いていく。
認知症にはなりたくない…では何ができるのか?
人生100年時代を迎えつつある現在、最もかかりたくない病気、ある意味、がん以上に恐ろしい病気として「認知症」を挙げる人は多いのではないだろうか。
認知症の発症率は年齢を重ねるほど高まっていき、80歳を超えると20%、85歳を超えると実に40%もの人が認知症になるという(厚生労働省の調査、詳しくはこちらの記事を参照)。つまり平均寿命が延びれば、それだけ認知症も増えるということ。厚生労働省の発表によると、2012年の時点で国内の認知症患者は約462万人だったが、その数は年々増えており、2025年には700万人に達すると推定されている。

実際、職場の同僚や上司の両親が認知症になり、介護で離職することになった――などという話は確実に増えている。そんな話を聞き、「家族に迷惑はかけたくない。自分はなんとか認知症は避けたいが、どうすればいいのか…」と漠然とした不安を感じている人は少なくないだろう。
だが、私たちは何ができるのだろうか。
一般に、認知症を遠ざける、つまり「ボケないため」にやるべきことというと、脳トレなどの知的活動、交友関係を広げコミュニケーションを活発にすることなどを思い浮かべる人が多いだろう。また、運動などにより体を動かすことも認知症の予防にいいということは知られるようになってきた。
最新食事法の驚きの効果、しかも日本人なら実践しやすい
もちろん、これらの対策も大切だが、忘れてはならないのが食生活だ。食生活と認知症リスクとは密接な関係にあり、食生活次第で認知症のリスクが下がることが、さまざまな研究から明らかになっている。

認知症と循環器病のエキスパートで、食事や薬による認知症治療に取り組んでいる国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)脳神経内科部長の猪原匡史さんは、「認知症予防のために改善すべき生活習慣には、運動、睡眠、喫煙などさまざまな要因がありますが、効果が最も大きいと考えられるのは食事です。詳しくは後述しますが、長年にわたって1日3食継続的にとる食事の影響は極めて大きいのです」と話す。
実際、食事面から認知症を予防しようという動きは世界的に広がっている。2015年には、認知症の予防を目的にした新しい食事法が米国で発表された。923人の高齢者を対象にした研究報告によると、この新しい食事法をきちんと実践したグループは、少ししか実践していないグループに比べ、「認知症の発症率が、何と53%も低かった」という驚きの結果が出ている(詳しくは後述)。
日々の食生活を改善するだけで、認知症のリスクを大幅に下げられるなら、やらない手はない。しかも、猪原さんは、「日本人の一般的な食生活を基にすると、この食事法を実践することは難しくありません」と話す。
そこで、今回の特集では、最新研究に基づいた「認知症を遠ざける食事」のポイントを猪原さんに聞いていく。第1回となる今回は、認知症と食生活の関係を解説していこう。