便検査が見逃す「大腸がん」を超早期に見つけるなら内視鏡!
第3回 世界の最先端を走る日本の内視鏡検査は「受けなきゃ損」
田中美香=医療ジャーナリスト
便の検査は毎年受けているし、陰性だから大腸がんではないはず。こんなふうに思ったことはないだろうか。しかし、大腸がんは肺がんに次いで死亡率が2番目に高いがん。その原因の1つは、便の検査が見過ごすタイプの大腸がんがあるから――。そう断言するのは昭和大学横浜市北部病院消化器センター長の工藤進英氏。進行が早く発見しにくい「陥凹(かんおう)型がん」を世界で初めて発見したスーパードクターだ。今回は、「超」早期のうちにがんを見つける大腸内視鏡のスゴさを、世界的名医が解説。大腸内視鏡検査を避けてきた人も、「尻込みしてる場合じゃない!」と病院に足が向くはずだ。
大腸がん死亡率が下がらない理由の1つは検査の選び方にある
大腸がんで亡くなる人は年間約5万人。がん全体でみると、女性の大腸がんの死亡率は1位、男性は3位という高い順位にランクインしている(図1)。
大腸がんの死亡率はなぜこれほど高いのだろうか。大腸がんの患者自体が増えてきていることも背景にあるが、それ以外にも理由はある。昭和大学横浜市北部病院消化器センター長の工藤進英氏は、「進行の早い、やっかいなタイプの大腸がんが、従来の便潜血検査による検診では見落とされやすいからです」と話す。
実は、これこそが大腸がん検診の落とし穴。大腸がんにはさまざまなタイプがあり、便潜血検査では引っかからない大腸がんも存在するのだ。
「大腸がんは、早く見つければ100%治るといっても過言ではありません。でも、すべての大腸がんが便潜血検査で見つかるわけではなく、見逃されているがんもあります。そのがんを発見できる検査があるのに、定期的に受ける人がまだ多くないのが問題です」(工藤氏)
便潜血検査が見落とす「陥凹型がん」とは?
健康診断や自治体の大腸がん検診でおなじみの便潜血検査は、便の中に混じる血液の有無を調べる検査。便が肛門へと送られる際、ポリープ状に盛り上がった部分があると、そこに便がぶつかって出血してしまう。ここで生じたごくわずかな血液も感知するほど、精度が高い点が強みだ。
しかし、「便潜血検査がすべての大腸がんに対して万能なわけではありません」と工藤氏は強調する。大腸がんは形態によっていくつかの種類があり、便潜血検査で陽性となるのは、ポリープ状に出っぱった隆起型(図2-a)だけ。陥凹型(かんおうがた、図2-b)と呼ばれる凹んだ形のがんや、平坦型(図2-c)と呼ばれる平らな形のがんは、隆起がないので便は素通りし、出血もないために検査は陰性となってしまう。がんが隆起しているかどうか、この違いが、便潜血検査で見つかるかどうかの分かれ道なのだ。
図2 大腸がんは形態によってタイプが異なる
![]() | a 隆起型の例 ポリープから派生するタイプのがん。ただし、ほとんどのポリープは悪性化しない |
![]() | b 陥凹(かんおう)型の例 最初から隆起しないがんとして発生し、早く進行する。便潜血検査で見つかりにくく、内視鏡でなければ発見は困難 |
![]() | c 平坦型の例 隆起や凹みがない平坦ながん。便潜血検査では見つかりにくいが、陥凹がんほど早く進行しない |
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