胃カメラを鼻から入れれば楽チンって本当?
第2回 胃カメラ検査を早く終わらせるポイントとは
田中美香=医療ジャーナリスト
本特集の第1回では、胃カメラ検査につきものの、「オエーッ」という吐き気が起こりやすい人の特徴と、苦痛を軽減する「アイーン」の効果について解説した。それでも、胃カメラでつらい思いをしたトラウマを抱く人なら、「もっと楽に、少しでも早く終わってくれたら…」と切に願うもの。年間3800例もの内視鏡検査をこなす達人、丸子中央病院消化器内科の中島恒夫氏に、引き続き、胃カメラ検査を楽に受けるポイントについて聞いていこう。
たった1発のゲップが検査を30秒も長引かせる
「ゲップを我慢してくださいね」と言われても、どうにも我慢しがたい…胃カメラ(上部消化管内視鏡)を飲んだことがある人なら、こんな経験をしたことがあるはずだ。でも、その1発のゲップが墓穴を掘りかねないことをご存じだろうか。中島氏は、「ゲップをすれば、そのぶん検査時間が延長します。ゲップ1発で、約30秒延びると考えてください」と語る。胃カメラを入れる時はスコープの先端から空気を送り、異常を見落とさないよう胃を膨らませて観察する。その時、ゲップとともに空気が出て行くと、胃がしぼんで振り出しに戻ってしまうのだ。
中島氏によると、特にゲップが出やすいのは、胃の入口の筋肉が緩い人だという。肛門をキュッと締める「肛門括約筋」と同じように、胃の入口には、胃の内容物が逆流するのを抑える「下部食道括約筋」がある(図1)。肛門括約筋が緩むとオナラを我慢できないのと同じように、下部食道括約筋が緩むとゲップを抑えられなくなるのだ。
検査中にゲップを繰り返すと胃の飲食物や消化液が逆流し、胃と食道と境目の粘膜が裂けて出血することもあるという。これは「マロリーワイス症候群」と呼ばれ、肛門でいう「切れ痔」と同じ状態が食道で起こるようなもの。こうした非常事態に陥らないためにも、ゲップは何とか回避しなければならない。
「ゲップを抑えるには、胃カメラがのどを通過しやすくなる、“アイーン”の姿勢から下アゴを少しだけ引くと有効です(詳しくは第1回「『胃がん』の早期発見にバリウム検査はもはや時代遅れ」を参照)。加えて、ゲップが出やすい人には、ペパーミントオイル(医療用のメントール)を使うこともあります。これには一種のアロマ効果があって、胃の中に散布してゲップを抑え、検査時間がいたずらに延びないようにできます」(中島氏)