「胃がん」の早期発見にバリウム検査はもはや時代遅れ
第1回 つらくない胃カメラのコツは「アイーン」の姿勢にあった!
田中美香=医療ジャーナリスト
がんを早期のうちに見つけたい、でもつらい検査は避けたい…と誰もが思うもの。数ある検査のなかでも特にハードルの高い内視鏡検査では、口から入れれば「オエーッ」と吐きそうになり、下から入れればお尻を人様の目にさらす状態に耐えねばならない。だが、今や内視鏡検査は「受けなきゃ損」と言い切れるほど進化している。治療すればほぼ治る段階の、「超」早期がんを見つけるという圧倒的なメリットもあれば、つらくない胃カメラの飲み方もあるのだ。
本特集では「毎年受けたい!」と思ってしまう内視鏡検査のスゴさを、2人のスーパードクターが解説。「また今度でいいか」と先延ばしにしてきたことを後悔するはずだ。
つらくない胃カメラを一度体験すればリピーターに
「内視鏡検査でつらい経験をすると、皆さんトラウマになるのは当然のこと。だから、今度こそ上手な医師に、とドクターショッピングに走る人が多いのも無理はありません」――こう話すのは、丸子中央病院(長野県上田市)消化器内科医師の中島恒夫氏。年間3800例もの上部消化管内視鏡検査(以下、胃カメラ)をこなす、熟練の消化器内科医だ。

中島氏が以前勤めていた長野市の病院では、内陸部という立地にもかかわらず、胃カメラの検査のために、なんと小笠原諸島から遠路はるばる毎年来院する人もいたという。理由は、他院で受けた胃カメラ検査があまりにつらかったから。裏を返せば、一度つらくない胃カメラを経験すると、「何とか先延ばしにしたい」から、「また今年もあの先生の検査を受けよう」とポジティブになるほど、リピーター化するという。
より楽にがんを見つけるなら、「バリウム検査(バリウムを使う上部消化管X線造影検査)でいいじゃないか」という逃げ道もあるだろう。バリウムも決しておいしく飲めるものではないが、それでも太い管をのどに入れて「オエーッ」となる胃カメラより数段マシだと思う人が多い。だが、その発想では、楽な検査を優先するあまり、がんの早期発見・早期治療が後回しになってはいないだろうか。
中島氏は、「現在、市町村の胃がん検診は、バリウム検査、胃カメラ検査、ABC検診(*1)のいずれかですが、早期の胃がんを見つけるなら、胃カメラに勝るものはありません。唯一の難点、飲み込む時のつらささえ軽減できれば、胃がんの早期発見・早期治療が実現できます」と強調する。
しかも医師から見れば、胃カメラを入れやすい人・入れにくい人がいて、入れにくい人でも苦痛を軽減できるウマイ飲み方があるのだという。胃カメラのおいしい飲み方にはどんなコツがあるのか、胃カメラの達人に指南していただこう。