股関節の健康を維持する「グッド歩行」と「3つの筋トレ」
第2回 股関節を守る3つの運動で「歩く力」を維持!
柳本 操=ライター
一生元気に歩ける体を維持したいなら、きちんといたわるべきは“全身の動きの要”である「股関節」。本特集では股関節の健康の保ち方や、一生歩ける体を維持するための生活習慣を、股関節のエキスパートである石部基実医師に聞いていく。
第2回となる今回は、股関節への負荷を減らす歩き方、股関節を支える筋肉の鍛え方、しなやかな股関節を作るストレッチなど、実践的な対策を一挙に紹介していく。

一生自分の足で歩ける体を保つには、筋肉の維持だけでなく、「股関節」の健康を保つことがとても大切だ。上半身と下半身をつなぐ股関節は体の中で最も酷使されている関節の一つ。股関節が消耗すると、少しの距離でも歩行が困難になる。ひどくなると信号が青のうちに横断歩道を渡りきれなくなるというから深刻だ。
日本人固有の要素により、股関節を傷めるリスクが高い人もいるが(特に女性)、それだけでなく、肥満の人、重い荷物を持つ人、そして激しいスポーツをした経験がある人などは特に注意が必要となる(詳しくは第1回を参照)。
股関節の健康の保ち方を紹介する本特集。第2回となる今回は、年間600例以上の人工股関節手術(置換術)を手がける股関節のエキスパート・石部基実クリニック院長の石部基実さんに、患者さんに日頃アドバイスしているセルフチェック方法や、股関節にやさしい歩き方、股関節まわりのトレーニング・ストレッチなど、股関節の健康を保つための実践的な内容を聞いていく。
股関節を鍛えることはできる?
では、股関節の健康を保ち、長く歩ける体を維持するためには具体的にどうすればいいのだろうか。そもそも股関節を鍛えることなどできるのだろうか。
石部さんは「股関節は『関節』、つまり骨と骨との接続部です。ですから股関節自体を鍛えることはできません。関節はいわば『消耗品』。使えば使うほど、そして負荷がかかるほど、関節部分を覆う関節軟骨が消耗していき、痛みなどが発生するのです。しかし、日常のさまざまな負荷から軟骨を守ることはできます。これによって、消耗を最小限に抑え、股関節の機能を維持することができるのです」と話す。
「具体的には、“正しい歩き方”『グッド歩行』を習得して股関節の負荷を減らすこと。そして、股関節まわりの筋肉、特に下半身の筋肉を強化するのが肝要です。これにより股関節の安定性や動きが改善します」(石部さん)
「下半身の筋肉は衰えやすい筋肉で、年をとるとともに徐々に衰えていきます。このため、日常生活の中で衰えやすい筋肉を維持する努力が必要です。それが結果として股関節を守ることにつながり、『歩く力』の維持、そして老化の防止に役立つのです」(石部さん)
これらに加えて石部さんは、股関節をしなやかに保つストレッチを推奨している。股関節の柔軟性を上げ、転倒リスクを下げる効果が期待できるという。これら3つについて、次ページから詳しく解説していこう。
- (1)グッド歩行:股関節の負荷を減らす“正しい歩き方”を習得する
- (2)3つの筋トレ:股関節周囲、体幹、上肢の筋肉をバランスよく鍛える
- (3)ストレッチ:股関節をしなやかに保つのに有効。立ったままできる