体は股関節から老化する! 死ぬまでスタスタ歩くための秘訣とは
第1回 股関節の状態が健康寿命を左右する!
柳本操=ライター
一生、はつらつと元気に歩ける体を維持したい――。そのカギを握るのが、全身の動きの要である「股関節」だ。股関節が消耗すると、歩行が困難になるのはもちろん、生活に大きな支障が出て、「負の老化スパイラル」に陥る可能性がある。本特集では、股関節の健康の保ち方や、一生歩ける体を維持するための生活習慣について、股関節のエキスパートである石部基実クリニック院長の石部基実さんに聞いていく。

何歳になっても、自分の足でスタスタ歩ける体を維持したい――。これはミドル、シニア世代すべての人の願いだろう。
これを実現するために、多くの人が最初に思い浮かべるのは「筋肉の維持」ではないだろうか。実際、「毎日、しっかりウォーキングをしているし、筋肉が減らないようにも気を配っている。だから、一生アクティブに動けるはず!」と思っている人は多いだろう。
もちろん筋肉を維持するのは大切だが、それだけで何歳になってもスタスタ歩ける体を保てるわけではない。体を支える骨とその骨同士をつなぐ関節の維持も極めて重要だ。私たちが立ち上がったりしゃがんだり、歩行したり、という日々の動作の繰り返しの中で知らず知らずのうちに消耗しているのが関節。その中でも、上半身と下半身をつなぐ股関節は人間の体の中で最も大きな関節で、体の中で最も酷使されている関節の一つだ。股関節を維持できるかどうかが、「歩く力」の維持に重要となってくる。
「股関節」は全身の動きの要
「股関節は、さまざまな姿勢や動作を支える要となる、極めて重要な存在です。しかし、その重要性はあまり意識されていません。股関節が消耗して、痛みが出ると、歩行が困難になり、生活に大きな支障が出るようになります。ひどくなると、信号が青のうちに横断歩道を渡りきることができなくなったり、車のアクセルやブレーキを踏む動作すらできなくなることもあります。そうなる前に、股関節をいたわってほしいのです」と話すのは、股関節専門医の石部基実クリニック院長、石部基実さんだ。
石部さんは、年間600例以上の人工股関節手術(置換術)を手がけている股関節のエキスパート。石部さんは北海道・札幌市で開業しているが、来院する患者の半数以上は、道外から来るという。
人工股関節手術とは、金属(チタンなど)やセラミックなどの素材でできた人工の股関節を、すり減った自分の股関節と置き換える手術のこと。「この手術は、股関節が消耗した結果、変形してしまい、強い痛みによって日常生活も困難である患者さんを対象に行います」(石部さん)
手術を行うと、それまで四六時中悩まされていた股関節の痛みから解放され、患者さんは本当に喜び、元通りの生活を取り戻していくという。手術を手がける医師として、石部さんの大きな喜びにもなるが、同時に石部さんはこう思い始めたという。
「そもそも患者さんが手術するまでに至らないよう、股関節を健康に保つことが大切。これによって、自分の脚でスタスタと歩ける“健脚寿命”を長くすることができる。そのための指導・アドバイスこそしっかり行っていかなければならないのではないか」(石部さん)。その思いから、石部さんは『健脚寿命を延ばして一生歩ける体をつくる!』(すばる舎)などの股関節関連の著書を数多く手がけるようになった。